新型コロナウイルス×イベント×契約×労務+内定取消し

 ※随時、情報を更新しております。最下部に、新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由とした内定取消しについて加筆しました。

1 新型コロナウイルスの客観的データとリスク評価

 新型コロナウイルスの生活や事業への影響が日に日に増しています。

 

 2月27日には、安倍首相より全ての小・中・高・特別支援学校へ休校要請がありました。ただし、こちらはあくまで「要請」であり、何ら法的な根拠をもつものではありません。

 翌日には、あくまで休校するかどうかの最終判断は、各自治体・教育委員会に委ねられると補足説明があり、各自治体は対応に追われました。

(保護者への影響ももちろんですが、子どもの教育を受ける権利を一方的に奪うものである以上、客観的な危険性をもとにした合理的な根拠をもつ判断なのかは検証される必要があるでしょう。)

 

 また、平常時なら信用しないレベルのデマも流れ、マスクはもちろん、トイレットペーパーやオムツまでもが入手困難な状態になるなど、SNSをとりまくネットリテラシーが問われています。

 

「未知への恐怖」に対する人間の心の弱さや群集心理がネガティブに露呈してしまいました。

 

 このような「未知への恐怖」に対して、大事なことは、過大でも、過小でもかく、正しく恐れ、対策をとることではないでしょうか。

 

 現時点で判明している正確な情報を得て必要な対策をとる必要があります。そのためには、政府関連の情報を踏まえつつ、民間専門家ら複数の意見を取り入れ、共通点から学ぶことが大切です。前提情報に誤りがあれば適切な判断などできるはずもありません。

 

 例えば、一般の方向けには、2月25日付けで東北医科歯科大学が公表した「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック」があります。驚くべき新発見はありませんが、正しい情報とはえてしてそういうものでしょう。

 

 また、2月29日付で報道された各国専門家らによるWHOの調査報告書では、現時点で把握している客観的なデータがわかります。報道によると、「80歳を超えた感染者の致死率は21.9%」にのぼるものの、「感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状が見られない場合もあった」とのことで、子どもへのリスクは低いものと評価されています。

 「新型コロナウイルス感染症対策専門会議」でも、「10代、20代、30代の皆さん。若者世代は、新型コロナウイルス感染による重要化リスクは低いです」と明言されました。

 

 これまでの経緯やWHOの調査報告書のデータを踏まえ、一般の方が誤解しがちな点の解説などがわかりやすくまとめられているのがNEWS PICKの「超入門 これだけは知っておきたい 新型コロナウイルス」(無料限定公開)です。感染症の専門家によると、既に封じ込めの段階ではなく、医療対応が可能な程度に感染拡大のピークをおさえるべき段階に入っています。

 これについては、厚生労働省HPにおいても、「現在の状況と考え方」として、クラスターがクラスターが生むことを防止するための感染防止対策により、患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、医療提供体制を整える準備期間になると明言されています。

 

 今、対策すべきこと、その目的は何なのか、何のための手段なのか、それを見失ってはいけないでしょう。目的がぶれれば、手段を誤ります。

 現時点でリスクを全て評価してよいかはわかりませんが、冷静に情報を把握する必要があるでしょう。

 

 厚生労働省のHPにて、3月9日付で新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が公表されています。

 

 こちらではクラスターが発生する条件として、左図の3つの条件が指摘されています。

 

 これに対する対策として、次のことが指摘されていますので引用してご紹介します。

 

クラスター(集団)の発生のリスクを下げるための3つの原則

1. 換気を励行する

 窓のある環境では、可能であれば 方向の窓を同時に開け、換気を励行しま す。ただ、どの程度の換気が十分であるかの確立したエビデンスはまだ十分にありません。
2
人の密度を下げる

 人が多く集まる場合には、会場の広さを確保し、お互いの距離を1-2メ ートル程度あけるなどして、人の密度を減らす。

3. 近距離での会話や発声、高唱を避ける

 周囲の人が近距離で発声するような場を避けてください。やむを得ず近距離での会話が必要な場合には、自分から飛沫を飛ばさないよう、咳エチケットの要領でマスクを装着するかします。」

 

 3月10日には、厚生労働省のHPに「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」が公表されており、一連の対応策が整理されていますので、ご参照ください。また、3月19日時点での諸外国における行動規制の状況についても一覧表が公開されております。


2 新型コロナウイルスに関する法的問題の参考資料

  新型コロナウイルスに関する企業・労働者向けの情報としては、厚生労働省が「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け) 」「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者向け)」をそれぞれ公表しています。

 特に労務関係の一般的な注意点は、こちらで確認できますので、ご参照ください。

  

 また、法的な詳しい分析は、NBL899号(2009年2月15日号)「新型インフルエンザと法的リスクマネジメント」(中野明安弁護士)を商事法務が公開してくれており、大変参考になります。

  「旬刊商事法務」3月5日号から連載予定の「新型コロナウイルス感染症への法務対応」も公開されておりますので、こちらもご参照ください。

 

 さらに、東京弁護士会災害対策委員会の有志メンバーがtwitterで詳しい新型コロナウイルス 生活問題Q&Aを作成・公開してくれていますので、こちらもご参照ください。


3 新型コロナウイルスの契約への影響

(1)新型コロナウイルスに関する知見を踏まえたイベントの開催・中止の判断

 政府は、2月26日付で「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請」すると発表しました。

 そして、この自粛要請は3月19日まで延長されました。

 

 ただし、これはあくまで大規模なイベントに対する「自粛の要請」であり、最終的な判断は主催者に委ねられています。

 そのため、もし上記要請の対象となる大規模なイベントであっても、開催が不可能なわけではありません。小規模なイベントであればならさらです。

 そのため、現状ではイベントの開催を中止するとしても、それは「不可抗力」による中止とは評価されません。法的根拠をもつ開催の中止命令ではなく、「要請」であるため、中止による損失を国が補償することはないでしょう。

 

① イベントを中止する判断について

 開催が可能である以上、法的にはイベントの主催者が一方的に契約を解除して、イベントの開催を中止できるとは限りません。ただ、主催者が中止するつもりの契約を維持してもお互いの損害が拡大するだけですので、中止に向けた条件面の話し合いをするほかないでしょう。

 なお、一定規模のイベントであれば、契約書や利用規約などがあるのが通常です。その場合、主催者判断による中止を可能とするに規定があるでしょう。これにあたるとして開催を一方的に中止することができます。また、その場合に、どちらが何を負担するかについても規定されている可能性があり、契約や規約に規定があれば、それにしたがって処理されます。

 

 イベントの開催を中止する場合でも、「不可抗力」ではなく、あくまで主催者判断による中止と評価されます。

 そのため、主催者側の理由による中止ですので、一般来場者がいるようなイベントではチケット代は返金し、出店者等の損害を賠償する義務を負うのが原則であり、準備のために要した費用などを補填する義務を負います(なお、東京マラソンでは参加費を返還しない方針が示され、議論をよんでいますが、これはあくまでも規約にその旨の規定があったからこそ法的に許される扱いとなります)。

 

 そのような前提で、実際には、中止する際の費用負担に関する話し合いをする必要があります。

 ただ、現実的には、主催者も出店料やイベント開催による利益を得ることができていませんので、そのような経済事情を考慮しつつ、今後の取引の可能性なども踏まえて、妥協せざる得ないでしょう。

 

 このような状況から、現状では、一般消費者向けのイベントは、大規模なLIVEから小規模なイベントまで、多くが中止になっているケースが多いようです。その場合、基本的な処理は契約や規約の内容によりますが、一般来場者のチケットは払い戻しとし、出店者等への補填は契約の内容を踏まえ、ケースバイケースで対応されているようです。

 

② イベントを開催する判断について  

 他方、BtoBの商談系のイベントなど、現状でも一定程度開催されているイベントもあります。主催者としても、中止による会場料(こちらも不可抗力ではなくキャンセル料が発生する場合が多いでしょう)などの大きな損失を避け、せめて出展料収入は確保したいという要請があり、開催されるケースもあるでしょう。

 

 また、新型コロナウイルスの客観的データがそろいつつあり、適切なリスク評価が徐々に進んでいます。

 このような状況を正確に分析した上で、ターゲット層や中止によって失われる利益を考慮し、感染防止対策の徹底を条件に、主催者としてイベントの開催を決断することも十分に可能です。

 

 もし開催する場合には、主催者として、現状の正確な情報をもとにした感染症対策を行っておくことは必要です。

 これを怠り、そのイベントで新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が起きるなどした場合には、一定の範囲でその責任を問われるリスクがあります。この場合、イベントのリスクや感染症対策として必要なことをしていたかどうかで、法的責任の有無が決まります。

 開催するとしても、厚生労働省のHPで注意喚起されている内容(「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」など)に掲載されている予防策を参考に、咳エチケットのためのマスク着用、アルコール消毒や手洗いうがいの励行、定期的な換気、密集度を下げる方策などをとるべきでしょう。

 十分な感染症対策を施した上で、そのことを記録としても残し、必要な注意事項告知するなどできる限りの対策を徹底しておきましょう。

 イベントの過度な自粛は必要ありませんが、一方で楽観視して「まあ大丈夫だろう!」と何も準備せずに開催することは控えるべきです。

 

 ただ、もし開催できたとしても、イベントのターゲットや内容によっては、思うような集客ができない場合も十分に考えられます。これについては、事前に何らかの保障をするような取り決めをしていない限り、出店者等から主催者に法的な補填を求めることはできないでしょう。

 

 政府から大規模イベントの自粛要請があった期間は3月19日まで延長されました。

 それ以降のイベントの開催については政府の方針を踏まえつつの検討にはなるでしょうが、おそらく、主催者としては、以下のような事情を総合考慮して判断していくことになるでしょう(ただし、下記は現時点での個人的な見解であり、随時補足します)。

 

 ①イベント開催の目的や必要性

 ②中止した場合に失われる権利や利益の重要性(教育を受ける権利に関わるものか、経済的な損害か、経済的な損害であればその程度など)

 ③イベントのターゲットと集客見込み(現時点でリスクが高い高齢者向けかどうか、密集度に関連する集客人数の見込みなど)

 ④開催場所の性質(野外か室内か、人と人の間に一定の空間をあけることができるかなど)

 ⑤感染症対策がどこまでとれるか(手洗いうがいの励行やアルコール消毒の準備、室内なら換気の可否や頻度、マスク着用による咳エチケット、体温や症状に関する注意喚起や必要に応じた検温の実施など)

 

 イベントを中止する場合には費用の負担をどうするのか、開催する場合には十分な感染症対策と集客できない場合のリスクをどのように負担するのかを、契約内容を踏まえつつ話し合いながら進める必要があります。

 

(2)新型コロナウイルスの影響による取引の不履行

 BtoBの売買契約や業務委託契約など、新型コロナウイルスの影響によって、契約が履行できなくなっているケースが生じてきています。

 

 例えば、中国から輸入していた部品が届かず、製品の製造が十分にできない場合、

 休校の影響を受けて人員や時間の確保ができず、業務の遂行に支障が生じたような場合です。

 

 このような場合、契約通り履行できないことについて、債務不履行として損害賠償責任を負うかどうかは、その原因が債務者にあると言えるかどうか(帰責事由の有無)によります。

 債務者が、事業者として必要な対策を講じていたにもかかわらず、やむを得ず生じた不可抗力による債務の不履行についてまで賠償義務はありません。

 

 例えば、中国製品の売買契約である場合、契約の内容として、商品が中国から輸入されることが前提として契約内容になっています。この場合、中国において当該製品の製造が停止し、流通しなくなっているのであれば、債務者としても入手はできず、不可抗力によると考える余地があります。

 

 一方、商品の部品を中国で製造していた、あるいは、中国から輸入していたような場合、そもそもそれを中国から入手していたことは、あくまで債務者側の事情(都合)です。そのため、不可抗力とは言えない可能性が高くなります。

 

 また、休校によって保護者の休暇により人材が確保できないとしても、これもあくまで債務者の内部的な事情です。不可抗力によるものとは評価されないでしょう。個人事業主の場合でも、不可抗力と評価するのは困難かもしれません。

 

 このような観点から、債務者が損害賠償責任を負うかどうかを踏まえ、納期の延長や契約の合意解約について協議する必要があります。

 

 なお、事業者向けの支援策をまとめたリーフレットも公開されていますので、各種支援策の概要はこちらで確認してください。


4 新型コロナウイルスによって引き起こされる労務問題

(1)感染症対策と使用者が負う安全配慮義務

 従業員を雇用する使用者は、労働者の安全に配慮する法的な義務(安全配慮義務)を負っています。

 そのため、現在の情勢からすれば、政府や専門家らの意見を踏まえつつ、新型コロナウイルスを正しく理解し、正しく恐れた上で、事務所や事業場において、感染症の流行を防止するための対策をとっておく必要があります。

 ここでも、「まあ大丈夫だろう」と楽観視するには法的にも社会的にも大きなリスクがあります。

 

 万が一、社内に新型コロナウイルスの陽性反応者がいることが判明した場合には、感染予防のため、保健所に連絡し、協力して消毒等の必要な措置をとる必要があります。

このことは使用者が他の従業員との関係でも、安全配慮義務を負っていることからも当然に必要なことです。

 その上で、さらにオフィスビルの管理者や同じビルの他の会社にも告知し、情報共有すべきでしょう。漫然と報告せず、クラスターを発生させて感染者を増やした場合には、会社が第三者に対して不法行為責任を負う可能性もあります。また、そのつもりがなくても、事実を「隠蔽」したかのように扱われれば社会的にも大きな制裁を受けることになりかねません。例え、影響が大きくても、大会社も事実を公表しています。経営者の判断にはなりますが、危機管理としては、少なくとも必要な範囲で事実を伝え、感染の範囲を最小限に抑える努力をすべきでしょう。

 

 もし使用者が安全配慮義務を果たしておらず、従業員がそれを理由に労務への従事を拒否した場合、賃金を支払わなくてはならない可能性すら生じかねません。また、安全配慮義務に反するような状態であるがために、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、労災に当たることはもちろん、従業員に対しても損害賠償責任を負うことになるでしょう。

 

 逆に、従業員に発熱等の疑わしい症状があり、医師の意見などの合理的な根拠をもって新型コロナウイルス発症の可能性が疑われる場合、他の従業員に対する安全配慮義務の履行という観点から、自宅待機を命じうる可能性はあります(医師の意見などの合理的な根拠を持って新型コロナウイルスが疑われるのであれば、休業手当の支払いが不要となる場合もあります)。

 ただ、実際には、医師の意見などの合理的な根拠まではなかなか準備できないでしょう。その場合、発熱等の症状や他の情報を踏まえ、一定の疑いがある場合、他の従業員への感染リスクも踏まえ、その従業員と話し合い、一定の補償をした上で、自宅待機とすることも考えるべきでしょう。

 

 

(2)休業中の休業手当の支払い

  新型コロナウイルスの影響は、特に観光業や飲食業のほか、製造業においても大きく、休業せざるを得ない事業所もあります。

 このような事情で休業せざるを得なくなったとしても、やはり不可抗力とはいえず、原則として使用者の責任となるため、使用者は従業員らに休業手当を支給する必要があります。

 ただ、この場合、条件を満たせば、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた雇用調整助成金の特例によって助成金(大企業は1/2、中小企業2/3)を受けられる場合があります。助成金を受けられるかどうか、ご確認ください。今後さらなら拡充が予定されているようです。

 

 また、2月27日付けの安倍首相からの休校要請を受け、多くの自治体や教育委員会において、一定期間休校することが決まりました。その影響を受け、児童らの監護のため、保護者が休まざるをえないことが想定されます。

 これについて、使用者として一定の配慮はなすべきですが、原則として休業手当を負担する義務はありません。ただし、これについても2月28日付で休業した保護者の所得を保障するための新しい助成金制度を創設する旨表明されました。個人事業主除き、休校による休業をした保護者に全額の給与を支払った企業に1日あたり金8330円の助成金を支払うことが決まったようです。

 その後、雇用している従業員が小学校等の休校の影響で有給休暇(労基法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主に対する助成金の申請が始まっています。また、委託を受けて事業をしている個人向けの助成金制度の創立も決まっており、今後詳細が決まる予定です。

 

 なお、新型コロナウイルス感染症対策のために、テレワークを新規導入する中小企業や休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業に対しても補助金が支給されることになっていますので、今回の感染症を契機として取り組むべく、こちらもご活用ください。

 

 このように使用者としても、正確な情報を把握して常にアップデートし、新型コロナウイルスを正しく恐れ(過少でも過大でもない)、適切な感染症対策をしておくことが必要です。

 

 

(3)新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由とした採用内定取消し

 「新卒で4月から就職を予定していた会社から、新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由とした内定取消しを受けた」との相談が早速ありました。

 このような内定取消しは許されるのでしょうか。

 もちろん事業を存続するためにやむを得ない場合もあるでしょうが、便乗したかのような内定取消しもあるかもしれません。

 この判断基準を確認しておきます。

 

 そもそも内定とは、法律的には、「始期付解約留保権付労働契約」と言われています。

 企業は留保解約権の行使が可能ですが、あくまで「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当」(最高裁判例によるルール)な場合に限られています。これは、従業員を解雇する場合とほとんど同じ程度の厳しい基準です。

 そのため、企業が経営の悪化等を理由に採用内定取消をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する4要素(①人員削減の必要性、②人員削減の手段として整理解雇することの必要性、③被解雇者選定の合理性、④手続きの妥当性)を総合考慮して、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と言えるかどうかで判断されることになります。

 

 このような判断基準からすれば、新型コロナウイルスの影響による経営悪化があったからといって当然に認められるものではありません。経営状態への影響を踏まえた上で、他の回避手段によってはそれを解消できないような場合に、正当な手続きを踏んで、はじめて許容されるものです。

 

 現実問題としても、新卒者は内定を取得して就職活動をやめているのであり、入社まで1ヶ月もないこの時期に内定取消しをすることはあまりにも大きな不利益を与えます。また、中途採用者であっても、内定取得したことから入社準備のために前職を辞めてしまっていることもあるでしょう。

 

 企業としては、このような内定取消しの厳格なルールを踏まえ、大きな不利益に配慮し、内定取消しをせざるをえないか慎重に検討し、せざるを得ない場合でも、一定の配慮をすべきでしょう。

 

 不当に内定取消しをされた場合には、内定取消しの無効を主張し、労働者としての地位の確認を請求することができます。ただし、そのような場合に、実際に入社して働くことはなかなか難しいでしょう。

 

 現実的には金銭的解決をすることも多く、その場合には、債務不履行(誠実義務違反)または不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償を請求することになります。

 大日本印刷事件(最高裁判所第二小法廷昭和54年7月20日判決)という最高裁判所の判例において、金100万円の慰謝料が認められていることが参考になるでしょう。

 また、内定取消しそのものはやむをえないとされたとしても、内定が取り消される過程において、企業が信義則上必要な説明をしなかったことを理由に金20万円の慰謝料を認めた裁判例(大阪地裁平成16年6月9日判決)もあります。

 

 なお、企業が採用内定取消しを行う場合、職業安定法上の「雇入方法等の指導」の規定(職安法54条)に基づき、あらかじめ所轄の公共職業安定所長に通知するものとされ、同所長は速やかにその回避について指導を行うこととされています。

 また、事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかにいえない場合や取消対象者に対して理由を十分説明していないか、就職先の確保に向けた支援を行わなかった場合などには、厚生労働大臣は企業の採用内定取消の報告内容を公表できるとされています(職安規則17条の4第1項)。

 

 厚生労働省のHPでは、「新規学校卒業者の採用に関する指針」新規学校卒業者採用に当たっての事業者向けの注意事項をまとめたリーフレットが公表されており、先ほど述べた内定取消しの判断基準とをやむをえず内定取消しを行う場合には就職先を確保し、補償などの要求にも誠意を持って対応するよう指摘されています。

 

 なお、読売新聞によりますと、政府が経済8団体に対して、内定取消しをしないよう要請したと報道されています。内定取消しを回避するよう事業者に促すリーフレットも公表されました。

何でも相談できるパートナーに!

 いまだに弁護士というと、個人の方はもちろん事業者の方々にも敷居が高く思われがちです。

 せっかく顧問弁護士がいても、「顧問弁護士には相談しにくい」という声すらよく聞きます。

 いい意味で、「弁護士らしくない弁護士」でありたいと思っています。

 今更ながら、このような場で広く発信し、誰かの力になれる『ご縁』が生まれることを願い、このようなホームページを作りました。

 

 あなたが今悩んでること、困ってること、ぜひ教えてください。

H13.3 清風高等学校卒業

H18.3 京都大学法学部卒業

H20.3 同志社大学法科大学院卒業

H21.12〜 六甲法律事務所

兵庫県弁護士会法教育委員会、同子どもの権利委員会副委員長、同修習委員会副委員長

同志社大学法科大学院アラムナイ・アソシエーション寒梅会会長

関西学院大学非常勤講師、京都大学法科大学院非常勤講師

兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー、神戸市いじめ問題対策審議会委員

 弁護士 松田 昌明

(兵庫県弁護士会所属)    

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