いじめ”重大事態”の判断と求められる対応とは?!〜茨城大附属小いじめ重大事態報告漏れ事案〜

 先日、 茨城大学の附属小学校が一昨年の11月に「重大事態」にあたるいじめを認知しながら、1年以上にわたり調査せず、大学が法律で義務づけられている文部科学省への報告をしたのも1年3か月後のことし2月になってからのことであったとの報道がありました。

 

 


茨城新聞 クロスアイ

「茨城大付属小 重大いじめ報告せず 不手際認める」

「茨城大(水戸市文京)は7日、教育学部付属小(同市三の丸)で当時4年生の女子児童に対するいじめ事案を2021年11月に「重大事態」と認識していながらも、文部科学省に報告していなかったと発表した。」

 

また、茨城大学はHPにおいて、次のような発表をしました。


 いじめ及びいじめ重大事態に関しては、そもそもいわゆる”いじめ防止対策推進法”に規定されています。

 同法では、まずは「いじめ」について、2条において、次のように非常に広い定義がされています。

 

 (定義)

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

 

 ざっくり言えば、いじめに当たるべきような言動が「いじめ」から取りこぼしがないように、被害者が苦痛を感じる行為を広く含めるように定義しています。

 

 その上で、「いじめ重大事態」については、28条で規定されています。

 重大事態には2種類あります。

 1号は、児童の被害の程度に着目し、「いじめ」により重大な被害が発生した場合(いじめによる疑いがある場合を含む)で、「自殺等重大事態」などと言います。これに対して、2号は、「いじめ」によって不登校が続いた場合(いじめによる疑いがある場合を含む)で、「不登校重大事態」などと言います。この不登校期間=欠席期間は年間で30日を目安とすると言われております。

 

(学校の設置者又はその設置する学校による対処)
第二十八条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。
 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
 第一項の規定により学校が調査を行う場合においては、当該学校の設置者は、同項の規定による調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。

 この2種類のいじめ「重大事態」に当たると、その疑いに対して、学校の設置者等は事実関係を明確にするための調査を行わなければならない法的な義務を負うことになります。また、調査に関しては、事実関係等の必要な情報を被害児童とその保護者に対しても情報提供義務を負うことになります。

 

 上記報道された事案では、この「重大事態」に当たる旨保護者から申告があり、少なくともいじめによる疑いがありながら、この調査をしなかったのです。これは法的な義務であり、法的義務に違反する状態となっていたと言えます。

 

 残念ながら、一連の「いじめ」対応、すなわち、

①「いじめ」に当たるかどうかの判断

②「重大事態」に当たるかどうかの判断

③被害児童に寄り添った適切な調査の実施

④被害児童や保護者への適時適切な情報提供

⑤被害児童に寄り添った登校支援

⑥加害児童や保護者への説明や指導

⑦再発防止策の実践

など法律上当然のことについて、まだまだできていない学校が多いのが現状であり、意識の改善が必要です。


 令和5年4月1日から子ども家庭庁が発足したことに伴い、いじめに関して「必要に応じて助言等を行い、改善を図る等の取組」を行うこととなり、学校やその設置者に報告を求めているようです。 

 

 どこまで利用する意義があるかは不透明であり、これからに期待するしかありませんが、 もし気になる方は文科省のHPをご覧ください。