セクハラ・パワハラなどのハラスメントを受けたら(早稲田大学ハラスメント裁判を通じて)

 先日、大学内でのセクハラやアカハラを訴えた裁判の判決があったとの報道がありました。

概要は以下のとおりです。


 「俺の女にしてやる」早大元教授が教え子にセクハラ発言 “アカハラ”が起こる3つの要因とは

 

 教授による明らかなセクハラ発言と学校側の対応については不法行為と認められたようですが、アカハラの主張までは認められなかったようです。

 

 また、660万円の請求額に対して、認容された慰謝料は55万円であり、金額的には十分とは言えないでしょう。金額はもちろん認定されたハラスメント行為の悪質性や継続性などによるところですが、被害者としてもなかなか納得はし難い金額かもしれません。


 最近、このようなアカハラが問題となるケースが増えています。

 実態としては、以前からあったのかもしれませんが、表面化するようにもなってきました。直近ではこのような事件もありました。

「博士論文指導を3カ月せず、東大、60代教授をアカハラで懲戒処分」(朝日新聞デジタル) 

 こちらの事案では、教授が2020年秋から約3カ月間、指導教員として担当していた大学院生が、博士論文に対する助言や指導をメールで再三求めていたにもかかわらず、具体的な指導をせず、提出期限のおよそ3週間前になって、文献不足の指摘といった具体的な指導をするようになったというものです。

 ただ、こちらのニュースは民事裁判ではなく、アカデミックハラスメントがあったとして教授を停職1カ月の懲戒処分にしたというニュースです。


 

 セクハラやパワハラなどのハラスメントは、根本的には、それを許容するような組織の体質があるかどうかが非常に重要です。

これは学校におけるいじめが、担任がクラスをコントロールできず、雰囲気が悪い場合に起こることと酷似しています。

 いわゆる”心理的安全性”がない場所では、ハラスメントが起きやすいのです。

 

 では、もしハラスメントを受けた場合、どのように対処すればいいでしょうか。

 法的な観点から言えば、最も重要なのは、証拠の確保”です。

 できる限り、客観的な証拠を残しておくことが鍵となります。

 客観的な証拠とは動かしがたい証拠、つまり、全く関係のない第三者がそれをみて間違いないだろうと思えるような決定的な証拠です。上記の裁判で、アカハラまでは認められなかったのは、前提となる事実に関する決定的な証拠がなかった可能性があるでしょう。

 

 具体的に言えば、ハラスメント行為そのものを記録した録音・録画、メールやメッセージなどがこれに当たります。録音・録画について、隠しどりしていいのかと聞かれることがよくありますが、ハラスメントが行われているような場面で証拠確保のために秘密で録音・録画することはやむを得ませんし、証拠としても有効です。

 

 逆にこのような決定的な証拠がない場合、証明することは難しくなってきます。ハラスメントに限らず、不法行為を受けた場合、法律的には被害者がハラスメント行為やそれによる被害=損害を証明しなければいけないことになっています。

 特にハラスメントの中でも、セクハラは2人だけの時に行われることも多いので、注意が必要です。

 ただ、上記のような決定的な証拠がなくても諦める必要まではありません。決定的ではないにせよ、例えば、日常的なハラスメント行為を受けていた場合に、具体的にその場所・日付・状況・言動などを具体的に日記帳などに書いていて、その内容がある程度本当であることが確認できれば一定の証拠としての意味を持ちます。また同じように、交際相手や友人に日々されたことを具体的にメッセージに書いて相談していた場合なども、いつどのようなことが行われたかの手掛かりになります。その頻度が高く内容も合理的なものであれば、嘘とは考え難く、一定の証拠としての意味を持ってきます。

 

 これに対して、密室ではなく、むしろ組織内の多くの人たちが見てる前で、パワハラが行われることもあります。このような場合、被害者としては、周囲の人が証言してくれることに期待するものですが、ただいざ裁判などにまで進展した時に自分の立場も顧みずに証言したりしてくれることは稀であり、そこまで期待することは酷なことでもあります。

 このような場合は、社内調査によって周囲の社員から聴き取りを行ってもらい、パワハラを認定してもらうことが期待でに?場合があります。組織としてのスタンスにもよりますが、社員としても社内調査であれば堂々と協力できますし、証言してもらいやすいケースがあるでしょう。

 

 裁判によるべきか、いったん社内調査を求めるべきか、状況によっても判断は難しいのですが、選択肢としては考えると良いでしょう。

 

 証拠についてまとめると、証拠としての価値が高い順に以下のようになります。

①録音や録画、メッセージなどハラスメント行為を客観的に記録した証拠

> ②①ではないけれども①に関する具体的な内容をその都度記録した日記や相談メッセージなどの履歴

> ③事後的にさかのぼって作成した起きたことの時系列メモ

 

 ハラスメントを継続的に受けている場合、可能であれば証拠の確保に努めましょう。

 ただ、あくまで一番重要なのはご自身の心身ですので、決して証拠確保のためとはいえ、無理は禁物です。精神面を一度崩すと回復するのは時間も労力もかかります。負担なくその場・状況から逃げることができるのであれば、「逃げる・回避する」というのも優良な策です。


 なお、以前行ったハラスメントの研修講義の内容に関してご興味ある方はコチラのブログをご覧ください。

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