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ボードゲームの法的保護(著作権など)を考えてみた!

 新年あけましておめでとうございます。

 年末年始は、家族や親戚でボードゲームをやって過ごしました。

 2022年の夏ころに”カタン”という世界で一番有名なボードゲームを購入して家族でやるようになってから、いわゆる”ボードゲーム沼”にはまりました!

 

 子どもたちと遊ぶとなると、なかなか大人も一緒に楽しめものは限られていますが、ボードゲームなら大人も楽しめながら遊べますし、繰り返しやるのにも付き合えます。

 また、それが主目的ではないものの、教育的効果もあるだろうなと実感しています。ゲームによっては運要素が強いものももちろんありますが、新しいルールをまずは知ってその中で行動し、かつ、その制約の中で勝利条件を目指して行動を考えるというのは、ある意味社会の様々な場面の縮図のようでもあり、療育的な観点から注目されている理由もよくわかります。

 

 そんなボードゲーム にはまり中の私ですが、せっかくなので、ボードゲーム界の役に立つべく、ボードゲームと法的な保護について少し考えてみました。

 

 特に知的財産の関係、アイデアの保護や著作権、商標権との関係について、整理してみたいと思います。

 

 ボードゲームを作っていこうという方にとって、参考になれば幸いです。

 

発明やデザイン、ロゴを守る知的財産権とは?

 ここではまず前提となる法的な権利や知的財産について、ざっくりと解説します。

 

 法律によって人に認められるものを権利と言います。

 形があるもの(有体物)に関する権利としては、所有権などがあります。これに対して、形のないものについて法律によって権利が認められる場合があります。これが総称的に知的財産権と呼ばれるものです。

 

 知的財産権の中には、代表的なものとして、簡単な構造や形状などを保護する実用新案権、より高度な発明を保護する特許権、商品やサービスの名称やマークを保護する商標権、デザインを保護する意匠権などがあります。これらは産業上保護される権利で、産業財産権と呼ばれます。

 

 例えば、「産業財産権とは」(INPIT:知的財産保護の窓口)では、炊飯器を1つの例として右図のように区別して説明されています。

 開け閉めしやすいフタの形状は実用新案権の保護対象、炊飯技術という発明は特許権の保護対象、炊飯器のデザインは意匠権の保護対象、炊飯器の商品名やブランドロゴは商標権対象となります。

 少しイメージできますでしょうか。

 

 これらに対して、産業財産権には含まれない知的財産権の代表として、著作権があります。著作権は産業上の財産権とは少し趣きが違い、”表現”を保護することによって、文化の発展を守っていくものです。また、その大きな特徴として、他の産業財産権とは違い、特許庁への申請・審査・登録の手続きが必要ありません。例えば、私が今、紙に絵を描けば、その著作権が発生するわけです。

 このような特徴を持つ著作権であるからこそ、そもそも著作権が発生するような著作物と言えるかどうかが必ずしも明確ではなく、トラブルが多くなりがちです。

 

 これらの知的財産権について整理すると、図表のようになります。こちらは、特許庁の「知的財産権について」というページから引用しているものです。

 

 ボードゲーム に限らず、何らかの新製品や新サービスなどを考えていく際には、こちらの整理を少し意識しておくといいでしょう。

 

 

ボードゲームのメカニクスやコンポーネントの法的保護は?

 ボードゲーム にはまり出してから驚いたのはその多様なシステムです。

 デジタルであればともかく、アナログのゲームでこのような多様なジャンルやメカニクスがあろうとは思ってもみませんでした。

 

 ボードゲームのメカニクスについて、新しいアイデアをもとに作られた場合、何らかの権利を取得することができるでしょうか。他方で、新しくボードゲーム を作ろうとする人はアイデアを真似すると権利侵害になるのでしょうか。

 なお、国をまたぐと国によっても適用される法律も変わってきますが、ここでは日本国内法を前提とします。

 

 前提として、少なくとも日本では、アイデアそのものは法律によって保護されていません。あくまでも法的に保護されうるのは、「発明に至らない考案」(物品の形状、構造、組み合わせ)「発明」「創作的な表現」「デザイン」「ブランド」などです。

 そのため、ボードゲームのメカニクスやルールなどのアイデア自体は著作権などでも守られず、法的保護を受けません。現に、タイル配置系、ワーカープレイスメント系、拡大再生産系、デッキ構築系、ブラフ(人狼)系などの系統が存在しているのもそのメカニクス自体を取り入れることは許容されているからこそとも言えるでしょう。

 

 ゲームのシステムに関しては、デジタルゲームに関して著作権等の侵害が争われた著名な裁判例として、「釣りゲーム事件(知財高判平成24年8月8日)」「放置少女事件(知財高裁令和3年9月29日)」などがあります。

 ここでは後者を少し紹介しておきましょう。

 

 携帯電話機等を用いたゲームの模倣が問題となった事案について、当該裁判例では,次のように判示されました。

 

①「通常の映画とは異なり,システムないし ルールが決められ,プレイヤーはシステムないしルールに基づいてプレイするところ,このようなゲームのシステムないしルール自体はアイデアそのものであり,著 作物ということはできず,システムないしルールに基づき具体的に表現されたもの がある場合に,初めてその創作性の有無等が問題となるというべきである」

 

②「このようなゲームにおける各画像及びその組合せ・ 配列については, プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性,操作等の利便性の観点から機能的 な面に基づく制約を受けざるを得ないため,作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず,上記制約を考慮してもなおゲ ーム作成者の個性が表現されているものとして著作物性(創作性)を肯定し得るのは,他の同種ゲームとの比較の見地等からして,特に特徴的であり独自性があると 認められるような限定的な場合とならざるを得ないものというべき」

 

③「これらのゲーム内容及び各画面等については,基本的構成,具体的構成及び利用規約のいずれにおいても, アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において共通しているにすぎず,また, 具体的表現においては相違するものである」

 

 デジタルゲームの裁判例ではあるものの、ゲームのシステムやルール自体はアイデアであり、デジタルゲーム以上に自ずと制約があるアナログゲームにおいては、著作物として肯定できるような創作的表現の幅はやはり制限され、著作権が認められる範囲はコンポーネントのデザインなどの表現部分に限定されると考えられるでしょう。

 

 ただし、あるボードゲームをそのままパクるということになると、例えばパッケージやコンポーネントのデザインが表現物として著作権が発生し、かつ、それを侵害することになる可能性が高いと言えるでしょう。また、商品名も真似をしていれば商標権侵害や不正競争防止法違反になりえます。ある人気で著名なボードゲーム に便乗して、類似のボードゲーム を作り、消費者が誤解して買うような商品を販売した場合、不正競争防止法に違反する余地がはあるでしょう。

 

 これらはあくまでも法律的な観点から権利侵害・違法になりうるかどうかの問題ですが、そうとまではいかなくても、業界の慣習上許されないということもあるでしょう。業界の慣習として認められうるなら、当該慣習に著しく違反するような不正な行為については、不法行為と評価できる余地があるでしょう。

 

 実際、私が知る限りにはなりますが、ある代表的なボードゲームのメカニクスを取り入れるとしても、もう一捻りを加えた上で、全く異なる設定でコンポーネントも大きく変え、独自の世界観を作るような工夫が施されているように感じます。そこにはもととなった作品への敬意があり、慣習的にもそのような形であれば、許容されているように思います。

 

ボードゲーム製作者がボードゲームを守るために?

 逆にボードゲーム 製作者の立場からできることは何でしょうか。

 先ほどのべた通り、メカニクスやルールなどのアイデアそのものは法的には保護されません。

 その代わりに、少なくとも商品名やブランドロゴについて、悪用を防ぐには、特許庁に申請し、商標権を取得しておく必要はあるでしょう。

 また、コンポーネントやパッケージのデザインなどは表現物として、それぞれが著作物となり、著作権が認められることになります。これらを侵害するような模倣品があれば、著作権侵害として警告していくなどの措置が必要でしょう。

 ボードゲーム関連で、「発明」として特許権まで取得できるような場面はほとんどないでしょうが、場合によっては特殊な形状のコンポーネントについて、物品の形状や構造に関する考案を保護する”実用新案権”を取得しておくことも考えられます。この実用新案権は特許権ほど強力な権利ではありませんし、実際の権利侵害の認定や対抗する力としては正直物足りないものですが、侵害を予防するために権利化し、明記しておくことで侵害を予防する事実上の効果はあるでしょう。

 

 大切なことは、自分の作品の個別的な権利関係を整理し、権利を明記してアピールすることによって、製作者が法的な感覚を意識的に管理し、侵害に対応する姿勢を示すことです。それが何よりも権利侵害の予防につながる可能性が高いと言えるでしょう。

 

 


(参考)商標調査と0から始める著作権を侵害しない方法+著作権を守る術

 

 商標権や著作権について、もう少し深掘りして知りたい方は下記の動画もご参照ください。