ダイハツの認証試験における不正行為の調査結果を受けて考えること!

 2023年12月20日付で弁護士を中心とするダイハツ工業株式会社の第三者委員会による調査報告書が公表されました。

 

 ダイハツHP

 https://www.daihatsu.com/jp/news/2023/20231220-1.html

 

 この内容は衝撃的な内容ででした。自動車業界はもちろん、社会的にも非常に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

 


 結論的には、不正行為として認定されたものが合計 174 個もあります。

 この内訳は、不正加工・調整類型28 個、虚偽記載類型 143 個、元データ不正操作類型 3 個です。

(ここでいう「不正加工・調整類型」とは試験実施担当者等が、意図的に、車両や実験装置等に不正な加工・調整等を行う行為、「虚偽記載類型」は試験成績書作成者等が、実験報告書から試験成績書への不正確 な転記を行うなどして、意図的に、虚偽の情報が記載された試験成績書を用いて認証申請を行う行為、「元データ不正操作類型」は試験実施担当者等が、試験データをねつ造、流用又は改ざんするなどして、意図的に、実験報告書等に虚偽の情報を記載する行為をそれぞれ指すものとして定義づけられています。)

 

 また、一番古いものは 1989 年まで遡り、全体の傾向としては2014 年以降の期間で不正行為の件数が増加している旨指摘されています。対象となる車種についても、多数に及んでいます。 

 

 不正の具体的な態様としては、本来衝突時の衝撃をセンサーで検知して作動するエアバッグをタイマーによって作動させて試験を行なったり、ヘッドレスト後方衝撃試験における助手席側の試験結果を運転者席の試験結果として数値を流用して虚偽の記載をしたり、助手席頭部加速度データを立会試験時のものではなくリハーサル試験時のものを流用して記載したりしたことを指摘されています。

 なお、開発日程の都合上、このような不正行為に及んだことが指摘されており、実際にはこのような不正行為がなくても試験自体はクリアした可能性も一部示されています。

 

 このようにして長年かつ多数にわたる不正行為については、決して個人の責任などではなく、やはり組織としての根深い問題があり、それを改善しなければ再発を防止することなどできません。”失敗から学ぶ”姿勢が何よりも大切です。

 

 当該調査報告書で指摘されている直接的な原因としては、以下の通り指摘されています。

①過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー

→開発の各工程が全て問題なく進む想定のもと、問題が生じたバイアの対応を行う余裕がない日程で開発スケジュールが組まれ、開発の遅れが販売日程に影響を及ぼす状況であり、担当部署以外から「認証試験は合格して当たり前」という考えが強くあった

②現場任せで管理職が関与しない態勢

→管理職が認証試験の実務や現場の状況に精通しておらず、報告や相談を行なっても解決が期待できないため、現場の担当者が問題を抱え込まざるを得ない状況であった

③ブラックボックス化した職場環境

→特に衝突安全試験の領域は専門性の高さから属人化し、チェック体制にふびがあり、職場環境がブラックボックス化していた

④法規の不十分な理解

→不正行為について過去から世襲されたグレーなものとして技術的には問題なく、法規上も問題ないはずと独自に判断して試験結果を流用していた

⑤現場の担当者のコンプライアンス意識の希薄化、認証試験の軽視

→担当部署では虚偽の情報や不正確な情報を記載してはならないというごく当たり前の感覚を失うほどコンプライアンス意識が希薄化していった

 

 また、当該調査報告書では管理職の関与について、現場の実情を管理職や経営幹部が把握できなかったと認定されているのですが、その原因として以下の通り指摘されています。

①現場と管理職の断絶による通常のレポーティングラインの機能不全

→管理職が認証試験の実務や現場の状況に精通しておらず、報告や相談を行なっても解決できなかった

②補完的なレポーティングラインである内部通報制度の運用の問題

→「社員の声」という窓口が設置されていたが、このような不正行為の通報はなく、むしろ自浄作用に従業員が期待や信頼を寄せていなかったことの証左である

③開発・認証プロセスに対するモニタリングの問題

→認証申請書類の正確性をチェックする体制が構築されていなかった

 

そして、本件問題の真因として以下2点が指摘されています。

①不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題

→経営幹部は、不正行為の発生を想定しておらず、法規認証業務において不正が発生する可能性と想定した未然防止や早期発見のための対策を何ら講ずることなく短期開発を推進した

②ダイハツの開発部門の組織風土の問題

⚫  現場と管理職の縦方向の乖離に加え、部署間の横の連携やコミュニケーショ ンも同様に不足していること

⚫  「できて当たり前」の発想が強く、何か失敗があった場合には、部署や担当 者に対する激しい叱責や非難が見られること

⚫  全体的に人員不足の状態にあり、各従業員に余裕がなく自分の目の前の仕事 をこなすことに精一杯であること


 このように不正行為の原因や背景を見ると、どのような組織においても起こりうることがわかります。そして、これまでも重大な不正行為が生じた事案では、同じような原因や背景が必ずつきものと言っても過言ではありません。

 

 組織を作る経営幹部としては、”社員が悪いことをするはずがない”という性善説でも、”社員は悪いことをするに違いない”という性悪説でもなく、”人は誰しも弱いものであり、条件が揃うと誰しも不正に手を染めてしまう恐れがある。だからこそ、弱い部下を不正から守らなければいけない”という性弱説の発想が必要でしょう。

 これは保育園における不適切保育の問題でも指摘したところですが、あらゆる業界における不祥事に通じることです。

 

 

 この不正の影響がどこまで及んでいくのかはこれからの展開を注意深く見守る必要がありますが、風評被害を含めダイハツ車の価値は大きく毀損されています。新車を購入しようとしていた人は購入停止になる流れのようですが、新車購入後間もない方については何か対応はあるのか、また中古車を購入した方はどうか(この場合販売した中古販売事業者には過失はないためより複雑です)、さらには中古自動車を販売する業者がダイハツ車を買い取って売却しようとしていた中古車について何らかの補填はあるのか、様々な問題が想定されます。

 

 理論上、第三者の違法な行為によって損害が生じた場合、その行為と損害の間に因果関係があること、発生した損害がその行為によるものとして相当な範囲と認められることを証明できれば損害賠償を請求できます。

 個人はもちろんですが、中古自動車販売業車からの損害賠償請求なども想定はできるところでしょう。