外資系企業における解雇の実態と弁護士対応

1 外資系企業でのレイオフ報道

 外資系企業による一斉解雇の報道をよく耳にします。対象は必ずしも日本法人であるとは限りませんが、実際、日本にある外資系企業で解雇され、それを争う事例もあります。

 

以下、報道より引用

 

Microsoft、営業部門などで数千人を追加削減へ

(2025年6月19日付日本経済新聞)

米マイクロソフトが営業部門を中心に数千人の人員削減を計画していることが18日、明らかになった。5月に実施した約6000人のレイオフ(一時解雇)に追加して、7月初めをめどに実施する。業績は好調だが人工知能(AI)への投資負担が増しており、人件費を抑える狙いだ。」

 

 こちらの対象に日本法人が含まれてるかは不明ですが、外資系の日本法人で勤めている方も増えている一方で、日本の解雇規制を意識せず、解雇する例もあり注意が必要です。

 

 

2 外資系企業での解雇規制と実態

 

 そもそも外資系企業であっても、日本法人での従業員を解雇する場合、日本の労働法が適用されます。

 

 そして、日本の労働法では、解雇権濫用法理により、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当である」と認められる場合にのみ解雇が有効となります。これは非常に厳格な規制であり、裁判においても厳格に判断されがちです。単に仕事ができない、能力が足りないだけで解雇しても無効になります。

 

 ただ、実態としては、外資系企業の場合、本国の解雇に関する規制の緩さからくる慣行や企業文化により、必ずしも日本の労働法に適合しない解雇が行われるケースがあります。

 特に、以下のようなケースではトラブルが発生しやすいでしょう。

 

①企業側の事情として、業績不振を理由として解雇する場合

 企業の業績不振や特定の事業部門の閉鎖などを理由とする解雇は、日本では「整理解雇」と呼ばれます。この場合、日本の法律では通常の普通解雇以上により厳格な要件が定められています。安易な整理解雇は無効とされる可能性が高くなるでしょう。

 

②労働者側の事情として、能力不足を理由として解雇する場合

 外資系企業の場合、本国が成果主義であることをが多いため、労働者のパフォーマンスが低いと判断されると、解雇につながることがあります。しかし、使用者側の期待に応えられなかったり、目標を達成できなかったりしたという理由だけでは、解雇は認めらません。

 

 

 

3 解雇を争うための具体的な方策

 もし突然企業から解雇を言い渡された場合、以下の対応を検討しましょう。

 

①冷静に証拠を確保する

 企業から突然解雇を告げられた場合、直後は動揺するかもしれませんが、冷静に証拠を確保していくことが大事になってきます。

 会話やメールなどの記録をできるだけ残しつつ、解雇理由を明記した「解雇理由証明書」の交付を企業に求めましょう。

 

②弁護士への相談と内容証明郵便の送付

 解雇された場合は早めに弁護士に相談しましょう。

 弁護士は、解雇の有効性を判断し、今後の対応方針を第三者目線でアドバイスしてくれます。

 信頼関係を築くことができる弁護士に見積もりを依頼し、費用対効果を考えた上で、依頼を検討しましょう。

 弁護士に依頼した場合、企業に対して内容証明郵便を送付して、解雇の無効を主張し、従業員としての地位が存続していることの確認や未払い賃金の支払いを求めていくことになります。

 

③労働審判・訴訟による解決

 企業側との交渉が進まない場合は、裁判所への労働審判や訴訟などの法的手続きに進むことになります。

 

 いずれの手続きにせよ、裁判所が関与する手続きの中で、一定の法的な判断をもとに解決の方向性を探ることになります。

 特にお互いに復帰を望まない場合には、企業を退職する前提で、解決金の交渉をすることになります。外資系企業の場合、大手法律事務所の弁護士費用もタイムチャージによる算定で高額にのぼるため、紛争の早期解決の観点から相当の金額の支払いに応じる可能性もあります。

 早めに見通しを立てて交渉に臨みましょう。

 

 外資系企業での解雇であっても、日本の労働法が適用されるため、本国の法令や慣行に従って安易に行われた解雇は無効となる可能性が高いでしょう。もし不当な解雇を告げられた場合は一人で抱え込まずに、早めに弁護士に相談しましょう。