不祥事対応の最適解とは?!〜性被害に対するジャニーズ事務所のコメントを通じて〜

 

 元ジャニーズJrの方がジャニーズ事務所所属時代にジャニー喜多川氏から性的被害を受けていたと公にした件については、もともと今年に入ってから、イギリス公共放送BBCが、ドキュメンタリーを世界に配信し、インターネットを中心に大きな話題になりました。

 

 

 しかし、その後も日本の大手メディアは後追い報道は控えがちで、とりあげませんでした。

 このような中、一昨日の12日、被害を訴えた方が、日本外国特派員協会で会見を行い、ネットメディア中心に報道され始めています。

 

 

 そして、この問題に関して、共同通信がジャニーズ事務所に取材をしたところ、同事務所からコメントが発表され、報道されました。

 それが次の通りです。

ジャニーズ事務所が共同通信の取材に対して出したコメントの全文
ジャニーズ事務所が共同通信の取材に対して出したコメントの全文

 

 ここでは、この公表されたコメントに関して、”組織や団体における不祥事の初期対応として適切だったか”に焦点を絞って考えたいと思います。

 

 既に各種専門家から多数指摘はされているところでしょうが、コメントの内容は非常に抽象的であり、内容はあってないようなものです。あえてそうしているのでしょうが、あまり意味があるようなものではありません。

 結局、言いたいことをまとめると、”前の代表はいないので、もう大丈夫”と言うことでしょうか。

 不祥事(疑惑を含む)に対するコメントとしては”悪い見本”と言わざるを得ないでしょう。

 

 それでは、このような不祥事に対してどのように対応すべきでしょうか。

 

 このような疑惑を含む不祥事が起きた場合、何より重要なことは事実の調査・確認です。

 

 ここが徹底できるかどうかが非常に重要になってきます。事実を確認しないまま、”組織や代表としての見解を示すこと”自体が悪手と言わざる得ません。万が一、その内容に反する事実が後に判明した場合、信用が地に落ちることになります。

 

 今回のコメントでは、むしろ事実関係について認めるとも認めないとも記載されておらず、その言及を一切避けていることがうかがえます。後に、どのような事実になっても、嘘をついたことにはならないのでしょうが、かといって人々の信頼を取り戻すような誠実な対応とは言い難いでしょう。

 もしあくまでも疑惑が事実に反するというのであれば、(後に覆される可能性も覚悟の上で)疑惑を明確に否定すべきでしょう。

 しかし、今回はそれもできていません。第三者が見れば、事実関係を一定程度認めているように見えますし、一般的にもそのように受け止められるでしょう。そのことを覚悟しているようにも見えます。

 

 いずれにせよ、このような場合には、事実関係をできる限り、利害関係のない第三者に調査をさせて、事実を解明し、それに対する具体的かつ実現可能な再発防止策を提示するという地道で過酷な道こそ、最も信頼を得る方法です。

 ましては今回のように多数の被害者がいるかもしれない事案ですから、被害者への徹底的な謝罪や償いもセットで考えていかなければなりません。

 

 事後対応については、初期対応が非常に重要ですが、ここでの対応は”失敗”と言わざるを得ないように見えます。ここからこの問題をどのように対処していくのか、不祥事対応事案としても非常に参考になるでしょうし、見届けていきたいと思います。

 

 

 なお、ジャニー喜多川氏によるジャニーズ事務所内での性的行為については、過去、週刊誌報道に対する名誉毀損訴訟の中で、東京高裁において事実が認められ、上告棄却により確定していることに留意する必要があります。

 当該裁判例では、以下の通り認定されているようです。

 詳しくは、みどり共同法律事務所の穂積剛弁護士がブログでまとめられていますので、ご参照ください。

 

「被害者である少年らの年齢や社会的ないし精神的に未成熟であるといった事情、少年らと一審原告との社会的地位・能力等の相違、当該行為の性質及びこの行為が少年らに及ぼしたと考えられる精神的衝撃の程度等に照らせば、少年らが自ら捜査機関に申告することも、保護者に事実をうち明けることもしなかったとしても不自然であるとはいえず、また、少年らの立場に立てば、少年らが、一審原告のセクハラ行為を断れば、ステージの立ち位置が悪くなったり、デビューできなくなると考えたということも十分首肯できるところであって、この点の前記〈証拠〉の各証拠は信用できるものというべきである。」

 「一審原告が、少年達が逆らえばステージの立ち位置が悪くなったりデビューできなくなるという抗拒不能な状態にあるのに乗じ、セクハラ行為をしているとの本件記事〈略〉の各記事は、その重要な部分について真実であることの証明があったものというべきである。」