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株式会社と経営権の争奪戦事例から会社法を学ぶ!

 『株式会社は誰のものか?』

 

 時に議論を巻き起こすようなお題ではありますが、少なくとも法律上の答えは1つしかありません。

 株式会社は株主のものです。出資者である株主は会社のオーナーであり、代表取締役や取締役もその株主から経営を託されているに過ぎません。

 これがオランダ東インド会社から歴史的に引き継がれ、現在の会社法の考えている株式会社です。

 

 株主というのは、自分が出資した金額の範囲でのみ責任を負う一方、会社の経営を決める議決権と企業経営による利益の還元を受ける権利を持つのです。

 

(株主の責任)

第百四条 株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
(株主の権利)
第百五条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
 剰余金の配当を受ける権利
 残余財産の分配を受ける権利
 株主総会における議決権
 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

 そして、株主たちが意思決定をする合議体として存在するのが株主総会です。株式会社の運営の根幹に関わることは、株主総会で決めなくてはならないのです。

 これに対して、株主たちから会社の経営を託された代表取締役を含む取締役は、あくまでもその経営判断の範囲でのみ会社のことを決められることになります。

 

(株主総会の権限)

第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。
(忠実義務)
第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 このことから、株を取得すると言うのは、株式会社の経営への影響を高め、ついには経営権を取得する行為そのものになるわけです。

 

 ある株式会社をグループ会社に入れたり、子会社にしたり、時に業務提携する方法としても、株式を取得すると言う方法が使われ、その際にどのような方法をとるかが考えられるわけです。

 このような時に株式交換やTOB(株式公開買付)などの方法が使われます。

 このあたりのM&Aあたりのことは、会社法を勉強し、条文をいくら読んでもなかなかイメージできず理解できないところです。

 そこで、最近のニュースを紹介して解説していきたいと思います。


「関西スーパー争奪戦 話題の激安オーケーの選択」産経新聞ニュース
「関西スーパー争奪戦 話題の激安オーケーの選択」産経新聞ニュース

『関西スーパー争奪 話題の激安オーケーの選択』

(2021年9月19日産経新聞ニュースより引用)

「関西が地盤の中堅スーパー、関西スーパーマーケットの経営権取得をかけた争いが激化している。8月末、関西スーパーの筆頭株主、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが関西スーパーを傘下に収める方針を発表すると、9月3日には首都圏が地盤のスーパーで、第3位株主のオーケー(横浜市)が関西スーパーの買収方針を表明。争奪戦の行方は、関西スーパーが10月下旬に開く臨時株主総会で一定の結論が出る。企業価値の向上にどうつながるか、株主を納得させる説明が求められそうだ。・・・」

 

 報道によりますと、関西では有名な阪急阪神百貨店や阪急オアシス、イズミヤなどを傘下におくH20リテイリング(以下、「H2O」と言います)が、関西でスーパーを展開している関西スーパーを傘下に入れる方向で現経営陣間で合意にいたったとのことです。

 

 そして、その方法としては、H20親会社として株式の50%以上を持っている持株会社が、関西スーパーの株式を100%株式交換によって取得するという方法です。会社法上の株式交換であり、株主総会の特別決議(過半数の出席+出席株主の3分の2以上の賛成が必要)が必要な方法です。

 そのため、現経営陣では有効的に合意していますが、あくまでも会社の根幹に関わることですので、会社のオーナーたる株主の66.6%を超える賛同が必要となり、10月下旬に開催される株主総会の議案として提案されることになったわけです。

 

 ただ、これには裏の事情がありました。

 実はOKという関東でディスカウントスーパーを経営する会社が、少しづつ関西スーパーの株を取得していき、事前に買収をもちかけていたというわけです。関西スーパーの経営陣はこれを拒否していますので、敵対的買収ということになります。

 そういう意味では、このH2Oの傘下に入るというのも、買収防衛策の1つであったと言えるでしょう。

 

 そして、これに対して、関西スーパーの株を7%持っている株主のOKはこの株式交換には反対する意思を表明しつつ、もしこの議案が株主総会で否決された場合には、改めてTOB(株式公開買付け)(金融商品取引法27条の2〜)によって買収をし、子会社とする方針を示しました。「否決されたら」という意味では条件付きではありますが、実際には株主総会に向けた票の争奪戦が繰り広げられているかもしれません。

 

 関西スーパーの株を一定する持っている会社は取引先も多いようで、そのような会社は現経営陣に配慮して賛成に回るかもしれません。

 他方で、個人株主からすれば、この株式交換が可決すればH20の株式に交換してもらえることになりますし、否決されれば関西スーパーの過去最高値の1株2250円でOKに買い取ってもらえることになり、どちらがメリット大きいかを考えて、賛否を決めることになるでしょう。

 

 元経営陣が、前者の方針で株主を説得するためには、H20の傘下に入ることによるH20含めた企業価値の向上について、どこまで説得的に語れるか、1つの鍵になるでしょう。

 

(株主総会の決議)

第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
 第百四十条第二項及び第五項の株主総会
 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)
 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会
 第百八十条第二項の株主総会
 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会
 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号、第二百四十三条第二項及び第二百四十四条第三項の株主総会
 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)
 第四百二十五条第一項の株主総会
 第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
 定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。
 第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
 第四百五十四条第四項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第一号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
十二 第五編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会 ← 株式交換
 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
 取締役会設置会社においては、株主総会は、第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。ただし、第三百十六条第一項若しくは第二項に規定する者の選任又は第三百九十八条第二項の会計監査人の出席を求めることについては、この限りでない。

 なお、会社法上の株式会社の本質的な部分については、以下の動画(弁護士松田昌明のLAW TUBE)で解説していますので、ご参考までに。

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H13.3 清風高等学校卒業

H18.3 京都大学法学部卒業

H20.3 同志社大学法科大学院卒業

H21.12〜 六甲法律事務所

R2.4〜弁理士登録

兵庫県弁護士会子どもの権利委員会委員長、同法教育委員会

同志社大学法科大学院アラムナイ・アソシエーション寒梅会会長

関西学院大学非常勤講師、京都大学法科大学院非常勤講師

兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー、神戸市いじめ問題対策審議会委員

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