インフルエンサーを利用したSNS広告による消費者被害とその責任

 先日、インフルエンサーがPR案件を受けてキャッシュバックキャンペーンの広告を拡散したところ、これを信じた人たちが、消費者金融に個人情報を登録してしまい、その情報が悪用されて消費者金融から勝手にお金を借りられたという事案が発生しました。このインフルエンサーに虚偽の広告掲載を依頼したとされた人が警察に逮捕される事態となりました。

 

 以下、報道内容です。

インフルエンサーが「広告塔」に 勝手に借金した疑いで男性逮捕

「他人名義のアカウントで消費者金融から約20万円を不正に借り入れたとして、京都府警が20代男性を窃盗と不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕したことが、捜査関係者への取材で判明した。男性らはSNS(ネット交流サービス)で人気のあるインフルエンサーに虚偽広告の掲載を依頼。閲覧した若者らを消費者金融に誘い込み、会員情報を勝手に使って現金を引き出していたという。」

 

 そもそもインフルエンサーとは、ソーシャルメディアやオンラインプラットフォームを通じて、一定のフォロワーや視聴者に影響を与え、情報や意見を発信する個人や団体のことを指します。

 イメージ的には数万人以上のフォロワーがいる方をイメージしますが、実際には数千人程度のフォロワーの方でも、怪しいものからちゃんとしたものまで、様々な広告の依頼がDMでくるものです。

 万が一、広告を依頼された場合、特にそれが”おいしい話”であればあるほど慎重に検討すべきでしょう。依頼主の企業名を確認してウェブサイトを検索し、企業情報ぐらいは最低限確認すべきでしょう。

 

 このようなインフルエンサーを利用する広告については、影響も大きく、法的規制が近時進められています。先日、本ブログでも紹介しましたが、ステルスマーケティングにも規制がかけられました。

 ステルスマーケティングとは、広告やプロモーションの手法の一つで、消費者に対して広告であることを明示的に示さず、製品やサービスを間接的に宣伝する方法を指します。

 詳細はこちらをご覧ください。

「10/1より、ステルスマーケティングへの新規制がスタート」

 

 さて、事件の話に戻りますが、報道による限り、上記事件の手口は詳しくは以下の通りだったようです。


【事件の手口詳細】

 まずIT企業をかたったアカウントからInstagramのDMで「公式LINEのURLを貼り付けた投稿をしてほしい。報酬は1投稿あたり十数万円支払う」などと広告の掲載を依頼されます。これに応じると、投稿内容を具体的に指示され、「5万円がもらえるキャンペーンがある。まずは公式LINEを登録して」などとInstagramのストーリーでリンク付きで発信します。フォロワーがこれを閲覧し、実際にLINEを登録してやりとりすると、キャンペーンに応募するために必要と誘導され、消費者金融に借り入れを申し込むためのURLが送られてきます。そして、消費者金融にアカウントを登録させられるのですが、その際にIDやパスワードを指定した文字列で登録するよう指示されます。このようにしてつくったアカウントの情報が悪用され、勝手に消費者金融からお金を借りられてしまうことになるわけです。

 


 インフルエンサーを盲信し、何を言ったかではなく、誰が言ったかで判断するようになってしまうと危険です。信頼しているインフルエンサーの発信というだけで信じてしままわないよう冷静な判断が必要です。

 

 広告を拡散したインフルエンサーの責任については、事前に共謀していたとか、詐欺であることをわかって協力したなどという事情がなければ刑事罰までは負わないでしょう。

 しかし、民事上の損害賠償責任についても常に大丈夫いうわけではありません。

 インフルエンサーが少し注意をすれば不審な点に気づけるような場合であれば、民事上の共同不法行為責任を負う可能性があります。この場合、依頼してきた人間とともに全額の損害賠償責任を連帯して負うことになります。

 ステルスマーケティングの規制など、インフルエンサーを利用した広告への規制が進んでいる状況も考えると、より慎重に広告の依頼主の身元や広告の内容を精査してから受けなければ、責任を問われかねないでしょう。

 もし"おいしいPR案件"のDMがきた場合には、目先の利益に飛びつかず、一歩とどまって考えましょう。