生成AI画像を使うのに最低限おさえておきたい著作権のポイント

1 生成AIの活用と責任

弁護士による生成AIと著作権〜北斗の拳風〜(ChatGPT)

 生成AIへの注目度は日に日に上がっています。これまで触ってこなかった方の中でも、画像をアニメや漫画風に変換してSNSにアップする人もよく見かけます。

 それ以上に、様々な業種でもその活用の幅は飛躍的に広がっています。

 

 Open AIがChatGPTをリリースした当初、例えば、法律相談の内容を入力して回答を求めても、正直言って、使いものにはなりませんでした。内容がほとんどなかったり、日本語自体もおかしかったり。

 しかし、今は違います。そのまま使えない、あるいは、使うべきではないとしても、質問の仕方、いわゆる「プロンプト」を工夫していけば、使える回答や大きなヒントになる内容を引きだすことが十分に可能です。

 特に自由な発想によるものではなく、ある程度定型化した内容について、一番厄介な0→1の部分を担ってくれることで、業務の効率化になります。

 例えば、使いやすいものに、研修やセミナーの構成を練ってもらうというものがあります。ただ、これも生成AIに丸投げするのではなく、いわば壁打ち的な感じで、対話しながら練り上げていくイメージで活用すると、より短時間で、より良いものができます。

 

 ただ、一方で、生成AIの回答を絶対的なものとして鵜呑みにするのはやはり危険でしょう。

 将来的にはともかく、現状、どんなことにせよ、「根拠は生成AI」と言って業務上許容されることはないでしょう。それが正しいかどうか、人の眼で見極めながら、その人の責任において使う必要があります。

 

 現時点ではまだあまりみませんし、個人的にそれを否定する気はありませんが、今後、クリエイティブな業務内容によっては、契約書内に生成AIの活用を禁止する条項が利用される可能性もあるでしょう。

 これは生成AIの利用そのものを否定したいというよりも、この後に論じる著作権との関係で、発注者側がそのリスク一切を避けるためにということです。

 


2 生成AIと著作権の意識すべきポイント

 

 このような生成AIですが、このブログを書いている2025年4月時点で、写真をジブリなどのアニメや漫画のテイスト・作風に加工することが流行っています。SNSで見ない日はない程度に。

 

 それでは、このような画像の投稿は法的に問題ないのでしょうか。その限界含めて一度立ち止まって考えてみましょう。

 ここでは生成AIの著作権法上の問題点を整理しておきたいと思います。

 特に個人としては現実的に見過ごされる場合でも、企業としては許されない場合もあるので注意が必要です。

 

 生成AIと著作権について、まずは大きく3つの論点があることを知ってください。ここだけでも知っていただけたら、十分な問題意識を持てることになるでしょう。

 

 【データ学習段階の問題】

 ①生成AIに著作物を学習用データとして読み込ませることに問題はないか

 【生成・活用段階の問題】

 ②生成AIが作成したものが著作権侵害に当たることはないか

 【活用・侵害段階の問題】

 ③生成AIが作成したものに著作権が発生するか(発生する場合は誰が著作者になるか)

 

 これらの論点は掘り下げていくと1つずつ難解なのですが、ここではポイントをおさえておきましょう。

 

 まずは、①について、アメリカなどでは著作権管理団体等からこれ自体が権利侵害であると主張する裁判にも発展しておりますが、日本では著作権法第30条の4という規定が新設されています。

 すなわち、著作権者の利益を不当に害しない限り、情報解析のために取り込むことは法律の明文で認められています。このような規定があることは、明文がなく、法的紛争に発展している諸外国と比較しても特殊で、先進的とも言えます。

 

 次に、②については、ジブリ風や北斗の拳風など、作風を真似るだけであれば問題ありません。

 作風はアイデアの一種ですが、文化にはアイデアを真似て発展してきた側面もあり、著作権法上もアイデアは保護されていません、著作権法によって法的に保護されているのはあくまで創作的な表現です。

 このような観点からすれば、生成AIが作った画像が作風にとどまらない場合に著作権侵害のリスクがあります。

 すなわち、実際に存在している特定の場面のイラストやデザインに類似している場合は著作権侵害になりえます。

 そのため、もし生成AIに制作させた画像等を企業がビジネスで利用する場合、最低限、その画像自体で画像検索して類似の元画像がないかどうかのチェックは必須でしょう。これで必要十分というわけではありませんが、一定のリスクは回避できるでしょう。

 

 最後に、③については、単純にプロンプトを書いて生成AIに制作物を生成させたとしても、それ自体は創作的な表現とは言えません。そのため、著作権も発生しません。

 多少プロンプトを試行錯誤した程度では、その結論は変わらないでしょう。

 著作権が発生するためには、あくまで制作者による創作的な表現と評価できる活動がなければなりません。

 ただ、生成A Iによる成果物に対して、制作者がさらに創作を加えた場合や、制作者が原案を作成した著作物に生成AIでアレンジしたものであれば著作権が発生しうるでしょう。

 例えば、デザイナーがデザインの発注を受けて生成AIを活用して制作して納品した場合、それが他者の著作権侵害にならないように配慮すべきことは当然ですが、加えて自身による著作物として著作権を有する状態で納品し、契約によっては著作権譲渡が求められることもあるでしょう。生成AIによる制作として著作権が譲渡できない(発生しないものは譲渡できない)場合、契約違反の指摘を受けるリスクがあるでしょう。そのような観点から、先ほど述べたとおり、発注者の立場から、著作権を管理できないリスクをおそれて、契約書で生成AIの活用を禁止する条項を設ける可能性があるでしょう。

 

 

 生成AIをビジネスに活用し、対外的にも発表していく場合、まずはこれら3つの問題意識をもって取り扱っていきましょう。