新型コロナウイルス(COVID-19)×契約×労務+緊急事態宣言×経済支援策

※随時、情報を更新しております。特に、今後の事業再開に向けては「6 緊急事態宣言からの出口戦略と事業の再開へ!」に、経済支援策については「7 新型コロナウイルス(COVID-19)関連支援策の整理」で最新の情報を整理しております。

※平時はメールや電話等での相談は控えておりますが、緊急事態宣言下では、可能な限り、電話やメール、ZOOMを利用した相談にも対応させていただきます。新型コロナウイルス関連の相談もお問い合わせください。

1 新型コロナウイルス(COVID-19)のリスク評価と専門家会議

 新型コロナウイルスの生活や事業への影響が日に日に増しています。

 

 2月27日には、安倍首相より全ての小・中・高・特別支援学校へ休校要請がありました。ただし、こちらはあくまで「要請」であり、何ら法的な根拠をもつものではありません。

 翌日には、あくまで休校するかどうかの最終判断は、各自治体・教育委員会に委ねられると補足説明があり、各自治体は対応に追われました。

(保護者への影響ももちろんですが、子どもの教育を受ける権利を一方的に奪うものである以上、客観的な危険性をもとにした合理的な根拠をもつ判断なのかは今後の学校再開に向けても、検証されていく必要があるでしょう。)

 

 また、平常時なら信用しないレベルのデマも流れ、マスクはもちろん、トイレットペーパーやオムツまでもが入手困難な状態になるなど、SNSをとりまくネットリテラシーが問われています。

 

「未知への恐怖」に対する人間の心の弱さや群集心理がネガティブに露呈してしまいました。

 

 このような「未知への恐怖」に対して、大事なことは、過大でも、過小でもかく、正しく恐れ、対策をとることではないでしょうか。

 

 その時点で判明している正確な情報を得て必要な対策をとる必要があります。そのためには、政府関連の情報を踏まえつつ、民間専門家ら複数の意見を取り入れ、共通点から学ぶことが大切です。前提情報に誤りがあれば適切な判断などできるはずもありません。

 

 

 2月29日付で報道された各国専門家らによるWHOの調査報告書では、現時点で把握している客観的なデータがわかります。報道によると、「80歳を超えた感染者の致死率は21.9%」にのぼるものの、「感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状が見られない場合もあった」とのことで、子どもへのリスクは低いものと評価されています。

 3月2日付の「新型コロナウイルス感染症対策専門会議」でも、「10代、20代、30代の皆さん。若者世代は、新型コロナウイルス感染による重要化リスクは低いです」と明言されました。

  2月後半頃から、感染症の専門家によると、既に封じ込めの段階ではなく、医療対応が可能な程度に感染拡大のピークをおさえるべき段階に入っています。厚生労働省HPにおいても、「現在の状況と考え方」として、クラスターがクラスターが生むことを防止するための感染防止対策により、患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、医療提供体制を整える準備期間になると明言されています。

 

 今、対策すべきこと、その目的は何なのか、何のための手段なのか、それを見失ってはいけないでしょう。目的がぶれれば、手段を誤ります。冷静に情報を把握する必要があるでしょう。

 

以下、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解を紹介しておきます。

 

①(3月9日以降追記)

 厚生労働省のHPにて、3月9日付で専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が公表されています。

 こちらでクラスターが発生する条件として、3つの条件が指摘され、「3密」を避けよう(①換気の悪い密閉空間を避ける・②多数が集まる密閉場所を避ける・③間近で会話や発声をする密接場面を避ける)と指摘されました。

 

②(4月1日以降追記)

 4月1日に専門家会議より公表された「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、次の通り指摘されました。

 日本国内の感染の状況について、「今のところ諸外国のような、オーバーシュート(爆発的患者急増)は見られていないが、都市部を中心にクラスター感染が次々と報告され、感染者数が急増している。そうした中、医療供給体制が逼迫しつつある地域が出てきており医療供給体制の強化が喫緊の課題となっている。」

 

③(4月22日以降追記)

 4月22日に専門家会議より、

新たに公表された「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(リンクは概要のPowerPoint)では、緊急事態宣言が発出された状況下では「市民の行動変容」について、8割の接触機会の低減の徹底が重要であり、まん延を収束に向かわせると指摘され、「人との接触を8割減らす10のポイント」が公表されました。

  

 なお、新型コロナウイルスについて、4月下旬時点でわかっている内容を理解したい方には、公立陶生病院感染症内科の武藤義和医師の「新型コロナウイルスのNOW!」(2020年4月26日)がわかりやすく、参考になるでしょう。

 

④(5月7日以降追記)

 5月1日に専門家会議より、

 今後の見通しとして、「地域の状況に応じた対策の必要性」を指摘した上で、「①感染が一定範囲に抑えられていること(疫学的状況)」「②医療提供体制が確保できていること(医療状況)」を総合的に勘案して、引き続き、「徹底した行動制限」を維持するか、「新しい生活様式」に移行していくかについて判断することとし、行動変容が求められる地域においても、「自粛疲れ」への懸念から、制限を一部徐々に緩和していくことや学校・公園等の利用について検討していくと公表されました。

 

⑤(5月7日以降追記)

 5月4日に専門家会議より、

 1〜2週間程度の経過した時期に出口戦略の検討を行うとしつつ、長丁場に備え、「新しい生活様式」に移行するとともに、

 感染拡大予防と社会経済活動の両立を図るため、「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン」を作成すべきと示されました。

 

⑥(6月追記)

 5月14日に専門家会議より、

 事業者が提供するサービス場面ごとに具体的な感染予防を実践することが不可欠とし、サービスの内容に応じたリスク評価、対策の検討・業種共通の留意点・感染対策の例などを意識し、業種ごとのガイドラインを作成し、業界をあげて普及し、現場での試行錯誤の中で実践していくべきとされました。

 

 

⑦(6月追記)

 5月29日に専門家会議より、


2 新型コロナウイルス(COVID-19)対策法務関連情報の紹介

①企業・労働者向けQ&A

→厚生労働省:「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け) 」「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者向け)」

 

②感染症(新型インフルエンザ)と法的な分析

→商事法務:NBL899号(2009年2月15日号)「新型インフルエンザと法的リスクマネジメント」(中野明安弁護士)

 

③株主総会の対応などの法的な分析

→商事法務:「旬刊商事法務」3月5日号から連載予定の「新型コロナウイルス感染症への法務対応」 

 

④弁護士らによる詳細なQ&A

→東京弁護士会災害対策委員会の有志メンバー:「新型コロナウイルス 生活問題Q&A」

 

⑤労務問題・返済猶予・テナント賃料などの対応

神戸シティ法律事務所の新型コロナウイルス対策ブログ

 

⑥改正前新型インフルエンザ特措法の解説

→中央法規:「逐条解説 新型インフルエンザ等対策特別措置法」(2013年12月発行)

 

⑦改正著作権法35条に基づく教育機関でのオンライン授業

→弁護士柿沼太一先生(STORIA法律事務所)「大学などの遠隔授業等における『著作権の壁』をクリアするためには」

 

⑧消費者問題の処理

→日本弁護士連合会消費者問題対策委員会「新型コロナウイルス消費者問題Q&A」

「目次 1 スポーツジム・塾との契約等について 2 結婚式のキャンセルについて 3 イベントのキャンセル関連について

4 旅行のキャンセルについて 5 交通関係(航空券,鉄道定期券等)のキャンセルについて 6 宿泊(ホテル等)のキャンセルについて

7 債務(借金)の支払について 8 いわゆる「給与(給料)ファクタリング」について 9 いわゆる「事業者ファクタリング」について

10 住宅関連について 11 悪質商法や特殊詐欺への対策について」


3 新型コロナウイルス(COVID-19)の契約への影響の検討

※こちらの項目は3月上旬に記載した内容です。その後の感染拡大により、都市部中心にイベント等の開催は難しくなっておりますが、いずれ再開する段階でも同様の問題が生じますので、記事はそのまま残しております。

(1)新型コロナウイルスに関する知見を踏まえたイベントの開催・中止の判断

 政府は、2月26日付で「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請」すると発表しました。

 その後も、この自粛要請は延長されました。

 

 ただし、これはあくまで大規模なイベントに対する「自粛の要請」であり、最終的な判断は主催者に委ねられています。

 そのため、もし上記要請の対象となる大規模なイベントであっても、開催が不可能なわけではありません。小規模なイベントであればならさらです。

 そのため、現状ではイベントの開催を中止するとしても、それは「不可抗力」による中止とは評価されません。法的根拠をもつ開催の中止命令ではなく、「要請」であるため、中止による損失を国が補償することはないでしょう。

 

① イベントを中止する判断について

 開催が可能である以上、法的にはイベントの主催者が一方的に契約を解除して、イベントの開催を中止できるとは限りません。ただ、主催者が中止するつもりの契約を維持してもお互いの損害が拡大するだけですので、中止に向けた条件面の話し合いをするほかないでしょう。

 なお、一定規模のイベントであれば、契約書や利用規約などがあるのが通常です。その場合、主催者判断による中止を可能とするに規定があるでしょう。これにあたるとして開催を一方的に中止することができます。また、その場合に、どちらが何を負担するかについても規定されている可能性があり、契約や規約に規定があれば、それにしたがって処理されます。

 

 イベントの開催を中止する場合でも、「不可抗力」ではなく、あくまで主催者判断による中止と評価されます。

 そのため、主催者側の理由による中止ですので、一般来場者がいるようなイベントではチケット代は返金し、出店者等の損害を賠償する義務を負うのが原則であり、準備のために要した費用などを補填する義務を負います(なお、東京マラソンでは参加費を返還しない方針が示され、議論をよんでいますが、これはあくまでも規約にその旨の規定があったからこそ法的に許される扱いとなります)。

 

 そのような前提で、実際には、中止する際の費用負担に関する話し合いをする必要があります。

 ただ、現実的には、主催者も出店料やイベント開催による利益を得ることができていませんので、そのような経済事情を考慮しつつ、今後の取引の可能性なども踏まえて、妥協せざる得ないでしょう。

 

 このような状況から、現状では、一般消費者向けのイベントは、大規模なLIVEから小規模なイベントまで、多くが中止になっているケースが多いようです。その場合、基本的な処理は契約や規約の内容によりますが、一般来場者のチケットは払い戻しとし、出店者等への補填は契約の内容を踏まえ、ケースバイケースで対応されているようです。

 

② イベントを開催する判断について  

 他方、BtoBの商談系のイベントなど、現状でも一定程度開催されているイベントもあります。主催者としても、中止による会場料(こちらも不可抗力ではなくキャンセル料が発生する場合が多いでしょう)などの大きな損失を避け、せめて出展料収入は確保したいという要請があり、開催されるケースもあるでしょう。

 

 また、新型コロナウイルスの客観的データがそろいつつあり、適切なリスク評価が徐々に進んでいます。

 このような状況を正確に分析した上で、ターゲット層や中止によって失われる利益を考慮し、感染防止対策の徹底を条件に、主催者としてイベントの開催を決断することも可能です。

 

 もし開催する場合には、主催者として、現状の正確な情報をもとにした感染症対策(特に上記3つの条件を取り除く)を行っておくことは不可欠です。

 これを怠り、そのイベントで新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が起きるなどした場合には、一定の範囲でその責任を問われるリスクがあります。この場合、イベントのリスクや感染症対策として必要なことをしていたかどうかで、法的責任の有無が影響されるでしょう。

 

 開催するとしても、厚生労働省のHPで注意喚起されている内容(「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」など)に掲載されている予防策を参考に、咳エチケットのためのマスク着用、アルコール消毒や手洗いうがいの励行、定期的な換気、密集度を下げる方策などを徹底すべきでしょう。

 十分な感染症対策を施した上で、そのことを記録としても残し、必要な注意事項告知するなどできる限りの対策を徹底しておきましょう。

 楽観視して「まあ大丈夫だろう!」と何も準備せずに開催することは控えるべきです。

 

 ただ、もし開催できたとしても、イベントのターゲットや内容によっては、思うような集客ができない場合も十分に考えられます。これについては、事前に何らかの保障をするような取り決めをしていない限り、出店者等から主催者に法的な補填を求めることはできないでしょう。

 

 イベントを中止する場合には費用の負担をどうするのか、開催する場合には十分な感染症対策と集客できない場合のリスクをどのように負担するのかを、契約内容を踏まえつつ話し合いながら進める必要があります。

 

(4月4日に追記)

 その後、状況は大きく変わってきました。現状で、大規模イベントの開催はもちろん、感染経路不明の感染者が多い地域では小規模なイベントの開催も控えざるをえない状況にはなってきています。

 今後は、専門家会議による提言の内容を十分に踏まえつつ、地域ごとの状況も見極めながら、リスクと対策を十分考慮しつつ、開催や再開について慎重に判断していくことになるでしょう。

 その際には、主催者として、以下のような事情を総合的に考慮して判断していくことになるでしょう。

 

 ①対象地域の状況と分類

 ②イベント開催の目的や必要性

 ③中止した場合に失われる権利や利益の重要性(教育を受ける権利に関わるものか、経済的な損害か、経済的な損害であればその程度など)

 ④イベントのターゲットと集客見込み(現時点でリスクが高い高齢者向けかどうか、密集度に関連する集客人数の見込みなど)

 ⑤開催場所の性質(野外か室内か、人と人の間に一定の空間をあけることができるかなど)

 ⑥感染症対策がどこまでとれるか(手洗いうがいの励行やアルコール消毒の準備、室内なら換気の可否や頻度、マスク着用による咳エチケット、体温や症状に関する注意喚起や必要に応じた検温の実施など)

 

(2)新型コロナウイルスの影響による取引の不履行

 BtoBの売買契約や業務委託契約など、新型コロナウイルスの影響によって、契約が履行できなくなっているケースが生じてきています。

 

 例えば、中国から輸入していた部品が届かず、製品の製造が十分にできない場合、

 休校の影響を受けて人員や時間の確保ができず、業務の遂行に支障が生じたような場合です。

 

 このような場合、契約通り履行できないことについて、債務不履行として損害賠償責任を負うかどうかは、その原因が債務者にあると言えるかどうか(帰責事由の有無)によります。

 債務者が、事業者として必要な対策を講じていたにもかかわらず、やむを得ず生じた不可抗力による債務の不履行についてまで賠償義務はありません。

 

 例えば、中国製品の売買契約である場合、契約の内容として、商品が中国から輸入されることが前提として契約内容になっています。この場合、中国において当該製品の製造が停止し、流通しなくなっているのであれば、債務者としても入手はできず、不可抗力によると考える余地があります。

 

 一方、商品の部品を中国で製造していた、あるいは、中国から輸入していたような場合、そもそもそれを中国から入手していたことは、あくまで債務者側の事情(都合)です。そのため、不可抗力とは言えない可能性が高くなります。

 

 また、休校によって保護者の休暇により人材が確保できないとしても、これもあくまで債務者の内部的な事情です。不可抗力によるものとは評価されないでしょう。個人事業主の場合でも、不可抗力と評価するのは困難かもしれません。

 

 このような観点から、債務者が損害賠償責任を負うかどうかを踏まえ、納期の延長や契約の合意解約について協議する必要があります。

 


4 新型コロナウイルス(COVID-19)の影響による労務問題

(1)感染症対策と使用者が負う安全体制の確立

 従業員を雇用する使用者は、労働者の安全に配慮する法的な義務(安全配慮義務)を負っています。

 これは使用者は、労働者の危険を防止するために、人的・物的な設備を備え、安全体制を確立させておかなければいけないという義務です。

 

 そのため、政府や専門家らの意見などの客観的・合理的な見解を踏まえつつ、新型コロナウイルスを正しく理解し、正しく恐れた上で、事務所や事業場において、感染症の流行を防止するための対策をとっておく必要があります。

 

 使用者独自の見解に立ち、「まあ大丈夫だろう」と楽観視するには、法的にも社会的にも大きなリスクがあります。

 

 万が一、社内に新型コロナウイルスの陽性反応者がいることが判明した場合には、感染予防のため、保健所に連絡し、協力して消毒等の必要な措置をとる必要があります。

 このことは、使用者が他の従業員との関係でも、安全配慮義務を負っていることからも当然に必要なことです。

 

 その上で、さらにオフィスビルの管理者や同じビルの他の会社にも告知し、情報共有すべきでしょう。漫然と報告せず、テナントビル等でクラスターを発生させて感染者を増やした場合には、会社が第三者に対して不法行為責任を負う可能性もあります。また、そのつもりがなくても、事実を「隠蔽」したかのように扱われれば社会的にも大きな制裁を受けることになりかねません。

 影響が大きいことを覚悟で、感染等の事実を公表している会社も多いでしょう。短期的に見れば影響は大きくても、社会的な批判は避けることができます。

 あくまで経営者の判断にはなりますが、危機管理としては、少なくとも必要な範囲で事実を伝え、感染の範囲を最小限に抑える努力をすべきでしょう。

 

 もし使用者が安全配慮義務を果たしておらず、従業員が感染対策の不十分さを理由に労務への従事を拒否した場合、賃金を支払わなくてはならない可能性も生じます。また、使用者が安全体制をとらず、安全配慮義務に反するような状態であるがため、従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、労災に当たることはもちろん、従業員に対しても損害賠償責任を負うことになるでしょう。

 

 逆に、従業員に発熱等の疑わしい症状があり、医師の意見などの合理的な根拠をもって新型コロナウイルス発症の可能性が疑われる場合、他の従業員に対する安全配慮義務を果たすという観点から、自宅待機を命じうる可能性はあります(医師の意見などの合理的な根拠を持って新型コロナウイルスが疑われるのであれば、休業手当の支払いが不要となる場合もあります)。

 

 ただ、実際には、医師の意見などの合理的な根拠まではなかなか準備できないでしょう。

 その場合、発熱等の症状や他の情報を踏まえ、一定の疑いがある場合、他の従業員への感染リスクも踏まえ、その従業員と話し合い、補償をした上で、自宅待機とすることも考えるべきでしょう。

 

(2)休業中の休業手当の支払い

  新型コロナウイルスの影響は、特に観光業や飲食業のほか、製造業においても大きく、休業せざるを得ない事業所もあります。

 

 このような事情で休業せざるを得なくなったとしても、やはり不可抗力とはいえず、原則として使用者の責任となるため、使用者は従業員らに休業手当を支給する必要があります。

 ただ、この場合、条件を満たせば、休業手当を支払った事業者は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた雇用調整助成金の特例によって助成金(大企業は1/2、中小企業2/3)を受けられる場合があります。助成金を受けられるかどうか、ご確認ください。

 その後、4月1日〜6月30日までの休業手当の支払いに関して、雇用調整助成金の特例がさらに拡充されています。内容は厚生労働省のリーフレットでご確認ください。なお、1月24日以降の休業について、遡っての申請も可能となっています。

 こちらの雇用調整助成金については、一定の条件のもと、上限はあるものの、休業手当の100%受給できるよう拡充されることが決まっています。今後の詳細をお待ち下さい。

 

 また、2月27日付けの安倍首相からの休校要請を受け、多くの自治体や教育委員会において、一定期間休校することが決まりました。その影響を受け、児童らの監護のため、保護者が休まざるをえなくなった方もします。

 これについて、使用者が休業手当を負担する法的な義務まではありませんが、休校による休業をした保護者に全額の給与を支払った事業者に1日あたり金8330円の助成金を支払うことが決まりました。こちらを利用し、全額支払うことも可能です。詳しくは厚生労働省のリーフレット「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」でご確認ください。

 なお、併せて、委託を受けて事業をしている個人向けの助成金制度も創設され、こちらは当該個人事業主に対して、1日当たり4100円(定額)の支払いを受けることができます。こちらも厚生労働省のリーフレット「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」でご確認ください。

 

 このように使用者としても、正確な情報を把握して常にアップデートし、新型コロナウイルスを正しく恐れ(過少でも過大でもない)、適切な感染症対策をしておくことが必要です。

 

(3)新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由とした採用内定取消し

 「新卒で4月から就職を予定していた会社から、新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由とした内定取消しを受けた」との相談が早速ありました。

 このような内定取消しは許されるのでしょうか。

 もちろん事業を存続するためにやむを得ない場合もあるでしょうが、便乗したかのような内定取消しもあるかもしれません。

 この判断基準を確認しておきます。

 

 そもそも内定とは、法律的には、「始期付解約留保権付労働契約」と言われています。

 企業は留保解約権の行使が可能ですが、あくまで「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当」(最高裁判例によるルール)な場合に限られています。これは、従業員を解雇する場合とほとんど同じ程度の厳しい基準です。

 そのため、企業が経営の悪化等を理由に採用内定取消をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する4要素(①人員削減の必要性、②人員削減の手段として整理解雇することの必要性、③被解雇者選定の合理性、④手続きの妥当性)を総合考慮して、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と言えるかどうかで判断されることになります。

 

 このような判断基準からすれば、新型コロナウイルスの影響による経営悪化があったからといって当然に認められるものではありません。経営状態への影響を踏まえた上で、他の回避手段によってはそれを解消できないような場合に、正当な手続きを踏んで、はじめて許容されるものです。

 

 現実問題としても、新卒者は内定を取得して就職活動をやめているのであり、入社まで1ヶ月もないこの時期に内定取消しをすることはあまりにも大きな不利益を与えます。また、中途採用者であっても、内定取得したことから入社準備のために前職を辞めてしまっていることもあるでしょう。

 

 企業としては、このような内定取消しの厳格なルールを踏まえ、大きな不利益に配慮し、内定取消しをせざるをえないか慎重に検討し、せざるを得ない場合でも、一定の配慮をすべきでしょう。

 

 不当に内定取消しをされた場合には、内定取消しの無効を主張し、労働者としての地位の確認を請求することができます。ただし、そのような場合に、実際に入社して働くことはなかなか難しいでしょう。

 

 現実的には金銭的解決をすることも多く、その場合には、債務不履行(誠実義務違反)または不法行為(期待権侵害)に基づく損害賠償を請求することになります。

 大日本印刷事件(最高裁判所第二小法廷昭和54年7月20日判決)という最高裁判所の判例において、金100万円の慰謝料が認められていることが参考になるでしょう。

 また、内定取消しそのものはやむをえないとされたとしても、内定が取り消される過程において、企業が信義則上必要な説明をしなかったことを理由に金20万円の慰謝料を認めた裁判例(大阪地裁平成16年6月9日判決)もあります。

 

 なお、企業が採用内定取消しを行う場合、職業安定法上の「雇入方法等の指導」の規定(職安法54条)に基づき、あらかじめ所轄の公共職業安定所長に通知するものとされ、同所長は速やかにその回避について指導を行うこととされています。

 また、事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかにいえない場合や取消対象者に対して理由を十分説明していないか、就職先の確保に向けた支援を行わなかった場合などには、厚生労働大臣は企業の採用内定取消の報告内容を公表できるとされています(職安規則17条の4第1項)。

 

 厚生労働省のHPでは、「新規学校卒業者の採用に関する指針」新規学校卒業者採用に当たっての事業者向けの注意事項をまとめたリーフレットが公表されており、先ほど述べた内定取消しの判断基準とをやむをえず内定取消しを行う場合には就職先を確保し、補償などの要求にも誠意を持って対応するよう指摘されています。

 

 なお、読売新聞によりますと、政府が経済8団体に対して、内定取消しをしないよう要請したと報道されています。内定取消しを回避するよう事業者に促すリーフレットも公表されました。

 

※平時は、メールや電話等での相談は控えておりますが、緊急事態宣言かでは、可能な限り、電話やメール、ZOOM等を利用した相談にも対応させていただきます。新型コロナウイルス関連の相談も是非お寄せください。


5 国からの緊急事態宣言+都道府県からの休業要請!

(4月8日追記)

 東京や大阪を中心に、感染経路不明の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が急増し、ついには1日当たりの感染者は、コンスタントに300人を超えるようになりました。

 最も恐れることは。医療体制の崩壊です。上述した通り、専門家会議でも、

東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5県においては、人口集中都市を有することから、医療提供体制が切迫」

していると指摘されています。

 

 そして、4月7日、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県を指定地域とした新型インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発出されました。

 

 この緊急事態宣言について、少し整理し、加筆しておきます。

 ①根拠法令:新型インフルエンザ等対策特別措置法

 ②根拠条文:32条〜61条(62条:損失補償)

 ③宣言主体:政府対策本部長

 ④宣言要件:「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるとき」+国会への報告

 ⑤宣言内容:緊急事態措置を実施する期間(2年以内)・区域・概要

 ⑥法的効果:主として、該当地域の都道府県(市町村)への総合調整権限の付与

       ❶都道府県知事から、住民に外出しない要請をする

       ❷都道府県知事から、学校・社会福祉施設・興行場・催物主催者等に使用の制限・停止・開催中止を要請する

        →正当な理由なく従わなければ指示することができる

       ❸都道府県知事から、所有者の同意を得て、土地・家屋・物資を利用して臨時の医療施設の開設ができる

        →正当な理由なく同意しなければ、同意なくても開設できる

       ❹都道府県知事から、運送事業者へ必要な物資や資材の運送、医療品等の配送を要請できる

       ❺都道府県知事から、所有者に対して特定の物資の売り渡し要請ができる→正当な理由なく応じない時は収用ができる

       ❻❸と❺を強制的に行う場合に、損失補償をしなければならない

 

 このように法令の規定を見ますと、権限を持つのはあくまでも対象地域の首長であるということです。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大状況は地域ごとで大きな差があります。このような状況を踏まえて、知事らが判断していくことになります。

 

 そして、できることとしては、あくまでも要請が中心です。

 強制的にできるのは❸医療施設のための土地収用と❺医療品等特定物資の収用のみです。 そうであるからこそ、法律上も❻損失補償が規定されており、そのような場合に所有者は補償を受けることができます。裏を返せば、それ以外については損失補償は法律上規定されていません。

 

 ❶の住民らへの外出しない要請も、これまで県知事らが法的な根拠なく行ってきた「外出自粛要請」について、法的根拠を持たせるものであり、それ以上ではありません。強制的なものではなく、罰則などもありません。必需品購入のための外出などはもちろん可能です。

 また、東京都知事は「ロックダウン」という言葉を用いましたが、法律上、いわゆる「ロックダウン」はできません。鉄道等の運行業者に対しても停止を強制する権限があるものではありません。ただし、緊急事態宣言が出された場合、東京都から脱出しようとする動きも予測され、事前に調整がされるものと推測されます。

 

 同時に、企業活動に関しても強制的に停止させる権限を持つものではなく、法律上も損失補償は規定しておりませんが、大企業をはじめ、多くの企業や事業者が一定期間事業を停止させると予想されます。

 このような経済への配慮から緊急事態宣言が出されていないとも言われておりますが、医療体制への逼迫から、時間の問題のようにも思います。東京や大阪を中心に、予測しつつ準備しておくべきでしょう。

 

 緊急事態宣言が出されたとしても、そのこと自体で何かが大きく変わるわけではありません。パニックが起き、東京都から地方へ多くの人が移動すれば、感染経路不明の感染が地方にも倍増します。

 あくまでも日本全国で、各地の状況を見ながら、人材や物資面で協力し合い、感染者数を抑えこむことで医療体制を整えることが目的です。

 決してパニックにならず、冷静に正確な情報を収集しつつ、事態を予測しながら、自分や大切な人を守るための行動を積み重ねていくべきと思います。

 その後の報道では、東京を中心に各対象区域で、住民への外出自粛要請はなされたものの、事業者や店舗への休業要請については対応が分かれています。

 東京都が公表した東京都緊急事態措置(案)では、一定の補償をともなう事業者への休業要請も含まれています。 

 しかし、政府は補償をともなう休業要請には消極的であり、直ちに事業者への休業要請はせず、宣言と住民への自粛要請のもとで2週間様子を見て欲しいと要請している旨の報道があります。

 大阪府や兵庫県においても、事業者への休業要請は様子を見てから判断するとされています。

 兵庫県では、「新型コロナウイルス感染症に係る兵庫県対処方針」が公表されておりますので、詳細はこちらをご確認ください。

 このような状況からすると、現時点では、緊急事態宣言を受けて休業した店舗はあくまで自主的な休業とも言えます。

 このあたりは上述した労働者に休業手当の支払いをしなければいけないかどうかに影響してくるところです。

 

 今後、緊急事態条項にともなう休業要請をするかどうか、補償をどのようにするのか、休業要請による休業の場合に従業員への休業手当を支払うべきかどうかについて、極めて微妙な問題を秘めており、推移を見守る必要があります。

 

(4月19日に追記)

 その後、各地で休業要請が出されましたが、都道府県独自の協力金の支給が決まっております。

 東京都は休業要請をした上で、施設の使用停止に全面的に協力した事業者に「感染拡大防止協力金」として金50万円を支払うこととしました。申請手続き等の詳細は、東京都産業労働局のHPでご確認ください。

 

 また、兵庫県の支援策「休業要請事業者経営継続支援事業」として、後記の国による持続化給付金に上乗せする形で、

休業要請に応じて、休業あるいは時短営業し、前年同月対比売上50%以上減少した事業者に対して、中小企業には金100万円、個人事業主には金50万円(ただし、飲食店やホテル・旅館の場合は、中小企業に対しては金30万円、個人事業主に対しては金15万円)支給されることが決まりました。

 

 


6 緊急事態宣言からの出口戦略と事業の再開へ!

 

(5月7日に追記)

 その後、緊急事態宣言は4月16日に対象地域が全国に拡大され、5月4日には5月31日までの延長が決まりました。

 ただし、あくまでも上記5月4日の専門家会議の結果を受け、地域ごとの実状に応じた対応をとるとともに、段階的な解除に向け、感染防止拡大の防止と社会経済活動の維持との両立を目指していくべき段階になっています。

 

内閣官房HPより以下抜粋)「・・・4月7日に宣言いたしました緊急事態措置の実施期間を、5月の31日まで延長することといたします。実施区域は、全都道府県であり、現在の枠組みに変更はありません。ただし、今から10日後の5月14日を目途に、専門家の皆様に、その時点での状況を改めて評価をしていただきたいと考えています。その際、地域ごとの感染者数の動向、医療提供体制のひっ迫状況などを詳細に分析をしていただき、可能であると判断すれば、期間満了を待つことなく、緊急事態を解除する考えであります。

13の特定警戒都道府県では、引き続き、極力8割の接触削減に向けた、これまでと同様の取組をしていただく必要があります。一方で、それ以外の県においては、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立に配慮した取組に、段階的に移行することをお願いいたします。・・・これからの1か月は緊急事態の収束のための1か月であり、次なるステップに向けた準備期間であります。専門家の皆様からは、今後、この感染症が長丁場になることも見据え、感染拡大を予防する新たな生活様式を御提案いただきました。様々な商店やレストランの営業、文化施設、比較的小規模なイベントの開催などは、この新しい生活様式を参考に、人と人との距離をとるなど、感染防止策を十分に講じていただいた上で、実施していただきたいと考えています。今後2週間をめどに、業態ごとに、専門家の皆さんにも御協力いただきながら、事業活動を本格化していただくための、より詳細な感染予防策のガイドラインを策定してまいります。・・・」

 

 このような内容を踏まえ、13の特定警戒都道府県では事業活動も再開していくことになるでしょう。

 また、13の特定警戒都道府県においても、状況とリスクを見極めつつ、感染拡大の防止を図ることができる前提の中で、社会経済活動の維持を目指していくことになるでしょう。

 

 そのためにも、企業や事業者としては、

 何よりも、新型コロナウイルス感染拡大防止ポリシー(指針)を策定し、公表、これを着実に実施していくべきでしょう。

 

 このことは、決して13の特定警戒都道府県に限られません。それ以外の地域でも求められる対応となっていきます。

 このような事業主の積極的な対応策こそ、自らの法的リスクを減らすことはもちろん、不安な情勢の中で、取引先や顧客に対して、明確な安心材料を提示することになると思います。いち早く準備しましょう。

 

 内容としては、取引先や顧客向けの対外的なものと、従業員向けの内部的なものに分けられるでしょう。 

 (従業員向けについては、就業規則や細則などで規定してももちろん構いません。)

 

 策定すべきことを考えながら、随時アップデートしていきます。

 

 新型コロナウイルス感染拡大防止ポリシー(草案)

  ①運営方針:新型コロナウイルス感染拡大を防止し、何よりもお客様(従業員)らの安全を第一に、必要な社会活動を維持していく

  ②前提とする科学的根拠:新型コロナウイルス感染症対策の専門会議の見解など

  ③該当地域の状況確認

  ④具体的な感染予防対策:アルコール消毒の徹底、マスクの義務的着用、アクリルパーテーション等の設置、社会的距離の確保、検温など

  ④発覚時の対応策:保健所の連絡・調査等への協力、閉店した上での全面消毒、接触者への情報提供など。

 

 

(6月以降追記)

  その後、緊急事態宣言はすべて解除されました。

 しかし、新型コロナウイルス感染によるリスクや影響そのものが低減したわけではなく、再度の感染流行も懸念されています。

 事業者としては、業界のガイドラインを参照しつつ、対策を決め、公開すべきでしょう。

 

 内閣官房のHPに業種別ガイドラインが整理されており、参考になるでしょう。


7 新型コロナウイルス(COVID-19)経済支援策の整理

 経済支援策全般について、厚生労働省がパンフレットを作成しております。

 正確であることはもちろん、非常にわかりやすくまとまっていますので、4月27日付「生活を支えるための支援のご案内」をご覧いただくことをまずはオススメします。

 また、経済産業省のホームページでは、経済支援策が業界別に整理され、業界ごとにリーフレットでまとめられています。

 

 これらの入り口として、概要を記載しておきます。 

 

 ※雇用調整助成金の申請が簡略化され、対象も拡充されています。しかし、それでもあくまでも休業手当を支払った事業者に対する助成金です。

 なおもオンラインでの申請はできず、必要書類が多く、支給までも時間がかかり、まだ使いにくいようというのが実態のようです。

 ※持続化給付金はオンライン申請も可能で、比較的早期に支給される見込みで、使えるものです。ただし、比較する対象月×12ヶ月と昨年度の売り上げの差額が、法人で200万円、個人で100万円にいたらなければ、その差額が支給の上限となりますので、何月を基準とすべきか慎重に検討しましょう。

 また、公的な見解として、当該給付金は課税対象になるとのことですので、ご注意ください。

 

 

☆国の持続化給付金とそれに併せて支給される都道府県の休業協力金とを確実に受領できるよう準備しましょう!

 

1 国から個人の方へ

 ①給付:特別定額給付金 → 令和2年4月27日を基準として1人10万円給付(※受付開始から申請期限は3ヶ月)

 ②給付:子育て世代への臨時特別給付金 → 児童手当を1人当たり1万円追加支給(申請不要)

 ③貸付;緊急小口貸付 → 休業等により収入の減少した人へ10〜20万円無利子貸付(社会福祉協議会)

 ④貸付:総合支援資金 → 失業等により生活の維持が困難な人へ15〜20万円無利子貸付(社会福祉協議会)

 ⑤猶予:厚生年金・国民年金・健康保険・税金・電気ガス料金等の支払い猶予

 ⑥給付:住居確保給付金 → 失業や廃業等により住居を失うおそれがある場合、月約5〜6万円を原則3ヶ月支給

 ⑦体制:生活困窮者自立支援制度・生活保護制度の活用

 ⑧給付:傷病手当金 → 新型コロナウイルス陽性判定による入院や発熱等による療養した場合に健康保険等から支給

 ⑨給付:会社からの休業手当 → 不可抗力な休業でない限り、平均賃金の60/100以上を支払う義務が会社にある

 ⑩支援:企業主導型ベビーシッター利用者支援事業 → 休校により学童も利用できない場合にベビーシッターの利用料金を補助

 

2 国から中小企業や個人事業主の方へ

 ①給付;持続化給付金 → 任意に選択した前年同月比で50%以上の減収がある場合、法人は200万円まで、個人は100万円まで支給

  ※前年と比較する月を自由に選択でき、同月×12ヶ月分と前年の総売上げの差額が上限となる

  ※4月27日付経済産業省「持続化給付金に関するお知らせ(速報版)」を参照、早ければオンライン申請から2〜3週間で受け取れる

 ②貸付:新型コロナウイルス感染症特別貸付+特別無利子補給制度 → 併用により実質的な無利子・無担保融資

 ③猶予:厚生年金・国民年金・健康保険・税金・電気ガス料金等の支払い猶予 

 ④給付:傷病手当金 → 新型コロナウイルス陽性判定による入院や発熱等による療養した場合に健康保険等から支給

 ⑤給付:雇用調整助成金 → 事業主が休業手当等を支払った場合に1日8330円を上限に中小企業には4/5を助成(さらに拡充予定)

 ⑥給付:小学校休業等対応助成金

  → 児童の休校により休職せざるをえなかった保護者に有給休暇を取らせた事業主に対して1日8330円を上限に全額支給

 ⑦給付:小学校休業等対応支援

  → 業務委託契約を結んで事業をしていたものが児童の休校により仕事ができなくなった事業主に1日4100円(定額)を支給

  

 このほか、多くの事業者がまずは今月の借入れ等の支払いに追われているかもしれませんが、

金融庁から各金融機関に各種債務のお返済について、返済猶予や条件変更に柔軟に応じるよう要請がされており、一定程度交渉が可能な状況となっています。ますは金融機関の担当者と交渉してみましょう。

 これについては、金融庁のHPで具体的な事例も紹介されていますので、こちらも参考にしつつ、提示してみても良いでしょう。

 

 また、同じく、賃料の支払いについても、国土交通省から、不動産関連団体を通じて、賃貸事業者に対し、賃料の支払いが困難な場合には支払い猶予に応じるなど柔軟に対応するよう要請がされています。

 そして、事業主の賃料については、支援制度の整備が各地方自治体でも進められており、地方自治体ごとにそのあり方が異なっていますので、ご確認ください。

 

3 兵庫県や県内市町村の支援策

 ※兵庫県のHPでまとまっている事業者向け支援策個人向け支援策はこちらから。

 ①休業への補償金

  兵庫県の「休業要請事業者経営継続支援事業」:国の持続化給付金への上乗せ(4月28日より申請開始)

  →休業要請に応じて、休業あるいは時短営業し、前年同月対比売上50%以上減少した事業者に対して、

   中小企業には金100万円、個人事業主には金50万円

  (ただし、飲食店やホテル・旅館の場合は、中小企業に対しては金30万円、個人事業主に対しては金15万円)支給

 

 ②賃料の補助

  神戸市:家賃を2分の1以上減額するオーナーに対して、減額分の10分の8を補助

  西宮市:20%以上売上げが落ちた個人事業主に対して1ヶ月分の賃料(上限10万円)の賃料支援(5月8日から申請可能)

  明石市:個人商店向けに店舗賃料(50万円以内)2ヶ月分100万円までの無利子・無担保融資

 

4 その他

 ①学生への経済的支援

  ・新型コロナウイルスの影響により「家計の急変」した方に支給・貸与される奨学金がありますので、

   文部科学省のHPからご確認ください。また、各大学でも奨学金制度が整備されています。

  ・民間の奨学金も多数あります(名称(主催)→対象・人数・金額・審査)。

   ❶「がんばれ!日本の大学生 応援給付金」(キーエンス財団

     →大学新2〜4年生・1000名まで・一律支給30万円・小論文等審査

   ❷「日本人対象奨学金」(似鳥国際奨学財団)

     →中学生・高校生・大学生・最大100人・月額5万or8万円(12ヶ月)・小論文等審査

   ❸2020年度給付奨学金(マース奨学財団)

     →東京都内の大学へ通う大学生・最大50名・月額5万円(12ヶ月)・作文等審査

   ❹奨学金(ナガサワひまわり財団)

     →大学新2〜4年生・35名程度・月額3万円(最短修了まで)・大学を通じて申込み

   ❺奨学金(長谷川財団)

     →大学生大学院生・15名程度・月額3万円(最短修了まで)・大学を通じて申込み

   その他多数の奨学金があります。令和2年5月1日付の募集一覧はこちら(長岡技術科学大学のHPより)から。

 ②オンライン(電話)診療の導入

  ・時限的・特例的なオンライン(電話)診療のが認められ、各医療機関が対応しております。

   全国の対応医療機関のリストは

   「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」(厚生労働省HP)から。

 ③教育機関によるオンライン授業の実施

  ・授業目的での公衆送信(オンライン)による著作物の利用について、すでに成立し、施行を待っていた著作権法35条1項を、

   令和2年4月28日よりい前倒しして施行することとした上で、特例的に令和2年度に限り、

   本来学校の設置者が「指定管理団体」へ支払うべき補償金を無償とする取り扱いを認めました。

   詳細は「授業目的公衆送信補償金制度の早期施行について」(文化庁HP)をご確認ください。

 

 

 なお、一覧性のあるものとして、弁護士の永野海先生がHP「法律と防災のページ」にて、一覧的に分かりやすい「新型コロナ対策支援カード」を作られています。下記の支援カードも是非ご参照ください。

 

 

 経済産業省のHPでも資金繰りへの支援策がまとめられています。4月14日時点の資金繰り支援内容一覧表をご参考に、利用可能メニューを確認し、詳細を相談窓口に問い合わせてみてください。


(補足)新型コロナウイルス(COVID-19)に関する経緯

 新型コロナウイルス(COVID-19)を取り巻く経緯について、今後の備忘録を兼ね、整理しておきます。

 令和2年

  1月9日  中国が武漢市の原因不明の肺炎につき、新型コロナウイルスによるものと発

  1月14日 WHOが新型コロナウイルス検出を認定

  1月16日 日本国内初の感染者を確認

  1月30日 WHOが緊急事態に該当すると発表

  2月1日  感染症法上の「指定感染症」とする政令を施行

  2月5日  ダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が判明

  2月13日 国内初の死者を確認

  2月26日 政府が、大規模イベントの中止や延期を要請

  2月27日 政府が、全国の小中高・特別支援学校を対象に3月2日から春休みまで臨時休校を行うよう要請

  3月1日  兵庫県内で初めての感染者を確認

  3月3日  同日の国内感染者は269人

  3月9日  政府が中国・韓国からの入国者に14日間待機要請

  3月11日 国内感染者が500名を超える

  3月19日 兵庫県から、不要不急の大阪やその他の地域との往来、外出や会合の自粛を要請(兵庫県内で92名の感染者を確認)

  3月27日 兵庫県から、大阪、神戸・阪神間など人口密集地との不要不急の往来を自粛要請(兵庫県内で120名の感染者を確認)

  4月7日  兵庫県等7都道府県に対して緊急事態宣言の発令

  4月16日 緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大

  5月25日 緊急事態宣言解除