
イブニングで連載されていた「相続探偵」という漫画が日本テレビの土曜9時枠でドラマ化されました。
最近はテレビもほとんど観ていないのですが、相続と探偵という組み合わせが気になって、Netflixで1話目を観ました。
主人公は、灰絵七生と書いてハイエナオ!
相続や遺産分割関連の事件ばかり首を突っ込んでいるため忌み嫌われ、「ハイエナ」と呼ばれているようです。
本来、争いのある相続に、弁護士以外が費用をもらって関わることは非弁行為といって違法行為・犯罪行為になりますが、一応そこは随時説明して牽制しつつ、主人公は元弁護士で、現在探偵という異色の経歴でした。
1話目のタイトルは「或る小説家の遺言」
早速、被相続人の動画による遺言が登場してきました。
あえて初めは指摘しない展開でしたが、現在の日本の法律上、動画による遺言は法的には効力は認められていません。
動画というのはその内容通り受け止めれば非常にわかりやすいものなのです。
しかし、強要されている状態で撮影されたり、編集して偽造されたり、その気になれば被相続人の意思と違う内容を意外と簡単に作れます。
書面でも、もちろん強要したり偽造したりする可能性はあるのですが、動画の改ざんリスクよりは小さいでしょう。
特に、公証役場で作成する公正証書遺言と違って、自筆証書遺言は全文自筆が基本ですので、なかなかこれを無理やり書かせるというのは簡単ではないところです。
このように動画による遺言は法的には意味がありません。ただ、もちろん本人の生前の意思を探る手掛かりにはなりえます。
ドラマでも動画は無効であることを前提に、全文自筆で法的に有効な自筆証書遺言書を顧問弁護士が預かっているというストーリーでした。
ただ、動画による遺言と自筆証書遺言書がなぜか全く同じ内容!それは全ての財産を老後のお世話をした秘書に譲るというものでした。
なぜ全く同じ内容の遺言を作ったのか、しかも被相続人は小説家で、動画による遺言が法的に意味を持たないことを理解しながら動画を撮っていたのです。この理由がストーリーに大きく影響するというもので、なかなか面白い視点でした。
ネタバレを防ぐため、ここは伏せておきます。
後半では、2通の自筆証書遺言書が出てきましたが、これらの有効性は先後関係で決まります。後の方、つまり直近の被相続人の遺言が被相続人の最後の意思として尊重され、それと矛盾する以前の遺言は撤回されたものとなります。
こうしてみると、結構、一般の方が知らない法律的な知識が使われた、学びのあるドラマでした。
2回目も解説しがいがありそうなら、また書いてみます。
相続や遺産分割は合理的な法律と不合理な感情が入り混じる複雑な事案が多くあり、なかなかドラマのようには解決しないものです。ただ、当職は弁護士として15年、相続や遺産分割については調停や審判、関連訴訟等も多く経験しており、交渉で解決する重要性も意識しています。もし相続に関連してお悩みの方はご相談ください。
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