近年、「デジタル遺産」という言葉を耳にする機会が増えました。
年齢問わず、スマートフォンやパソコンを利用するのが当たり前になり、保存されたデータ、ネット上の銀行口座、仮想通貨、SNSアカウントなど、私たちの生活には多くの“見えない財産”が存在しています。
これらのデジタル資産については、家族であっても分かりにくいものです。
相続が発生すると、「財産が見つからない」「相続手続きが進まない」「遺族間でトラブルになる」といった問題を引き起こすことがあります。
ここでは弁護士の立場から、デジタル遺産・デジタル終活の基本と今からできる備えについて解説します。
デジタル遺産というのは、明確な法的定義はありませんが、亡くなった方が生前に利用していたデジタル上の財産やデータを指します。具体的には、以下のようなものを指します。
・ネット銀行・証券口座(楽天銀行、SBI証券など)
・仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム等)
・サブスクリプション契約(Amazonプライム、Netflixなど)
・SNSアカウント(Facebook、Instagram、X(旧Twitter)など)
・クラウドストレージ(Googleドライブ、iCloud等)
・オンラインショップのアカウント(PayPay、楽天、メルカリ等)
これらのうち、資産価値があるものについては相続財産に該当します。逆に、価値がないように見えるSNSアカウントなども、放置しておくとなりすましや情報流出のリスクを招きますので、リスクになりうることに留意しましょう。
従来の財産とは異なり、デジタル遺産は「目に見えない」「通帳がない」「通知も届かない」という特徴があります。そのため、家族であっても存在に気づけないことも多くあります。
また、現実に以下のような問題も起きています。
● 仮想通貨のパスワードが不明で資産を引き出せなかった
亡くなった父親が仮想通貨を保有していたものの、パスワードや取引所名がわからず、資産はそのまま凍結された。
● SNSアカウントが放置され、不正投稿が続いた
故人のSNSアカウントが第三者に乗っ取られ、詐欺まがいの投稿が繰り返され、家族が対応に追われた。
● ネット証券口座が存在していたが、相続時に発見されなかった
被相続人のメールから偶然証券会社の通知を見つけて判明。遺産分割協議が完了してしばらくたってから発見されて、やり直しとなった。
このようなデジタル遺産に対する終活として、弁護士が勧める方法としては次のとおりです。
①デジタル資産の棚卸をする
持っているアカウントや資産をリスト化しておきましょう。エクセルや紙にまとめておくことが大切です。
②パスワード・ログイン情報を整理しておく
家族がアクセスできるよう、パスワード管理アプリや紙に書いて保管しておきましょう。
③信頼できる家族に情報の存在を伝える
いくら情報を残しても、存在を誰も知らなければ意味がありません。保管場所を知らせておくことが必要です。
④遺言書にデジタル資産の取り扱いを明記する
財産は明記した上で、それ以外についての取り扱いの意向を明記しておくと良いでしょう。
家族を困らせないために、元気な「今」のうちに対策をしておくことは大切です。
お悩みがあればお気軽にご相談ください。