以前、当ブログで「判決を”絵に描いた餅”にさせない」ための手段としてご紹介した「財産開示手続」ですが、その実効性に影響するような逮捕に至る事案が報道されました。
「民事執行法違反の疑い 裁判所に出頭しなかった建設業の男を逮捕 香川」(1/28(水) 12:13配信 KSB瀬戸内海放送)
https://news.yahoo.co.jp/articles/edc1986f2e94991e1df53f9fe11e0dda492b4c11
報道によると、 2026年1月28日、高松北署は、裁判所からの呼び出しに応じず財産開示期日に出頭しなかった建設業の男を、民事執行法違反の疑いで逮捕しました。男は警察の調べに対し「通知は読まずに捨てた」と供述しているとのことです。
せっかく民事裁判を起こし、勝訴判決を得ても、相手が開き直って支払いをしなければ、絵に描いた餅になってしまいます。そのような債務者の逃げ得を許さないため、2020年に民事執行法の改正が行われました。
特に強制執行の前提として行われる財産開示手続きを無視して出頭しない場合に、刑事罰を負うことになりました。
すなわち、2020年改正前は裁判所から財産開示手続きの呼び出しを無視しても、「30万円以下の過料」という行政上のペナルティしかなく、非常に実効性が乏しいものでした。これを受けて、法改正により「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という刑事罰が導入されました。
今回の事案は、まさに裁判所の財産開示手続きの呼び出しを無視することが逮捕や刑事罰に繋がるリスクをしめすものです。
逮捕された男性は、「通知は読まずに捨てた」と供述しているようですが、これは実質的に見れば、通知を受け取った上で無視したことを認めているに等しく、自白していると言える可能性があります。
このような報道によって、財産開示手続きを無視すれば逮捕され、刑事罰を受けうるというメッセージが徐々に伝わることで財産開示手続きの実効性も高まっていくでしょう。
裁判所による財産開示手続は、単なる話し合いの場ではなく、背後に国家の刑罰権を控えた調査手段となり、「正当な理由」なく欠席すれば、債権者による刑事告発を受ける今回のように警察が動くことになります。
当職も同様の案件で刑事告発に至り、警察が前向きに捜査をしている案件もあります。
これらから、それぞれの立場で、以下のような対応が重要となります。
①債権者側のポイント: 判決を取得しても相手が支払わず、強制執行できる財産も特定できない場合、財産開示手続を申し立てることが有効となります。財産開示手続きを債務者が無視すれば、刑事告発していくことで、逮捕や刑事罰など大きなプレッシャーを与えることができます。前科を避けるために債務者が支払いに応じる可能性も出てきます。
②債務者側のポイント: 「通知を捨てる」「無視する」という対応は非常に問題のある対応となります。仮に支払いが困難な事情があるとしても、無視するのではなく、法的な手続きの中で誠実に対応し、できる限りの提案をし、和解の道を探るべきでしょう。