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マンション共用部分が原因で発生した漏水に関する管理組合の工作物責任についての最高裁の判断!

1 報道と問題の所在

 マンションの共用部分が原因で発生した漏水に関して、その占有者が管理組合であることを前提に、管理組合の賠償責任を認める旨最高裁が初の判断をしました。

 

 この論法や結論はこれまでの実務に沿うものですが、内容を確認しておきましょう。

 

「マンション共用部原因の漏水「管理組合に賠償責任」 最高裁が初判断」(1/22(木) 15:12 毎日新聞)

 

 報道によると、概要は以下のとおりです。


「分譲マンションの共用部分の不具合で区分所有者の部屋に漏水が発生した場合、マンション管理組合が賠償責任を負うかどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は22日、「特段の事情がない限り、責任を負う」との初判断を示した。その上で、管理組合の賠償責任を否定した2審・東京高裁判決をいずれも破棄し、賠償額算定などのため、審理を高裁に差し戻した。」

 

 

 老朽化したマンションのトラブルとして、突如発生する漏水トラブルはつきものです。リフォームされていると部屋の内部は綺麗になっているものです。しかし、目に見えない共用部分は老朽化している可能性があります。老朽化したことにより、共用部分の不具合から被害が生じた場合、その責任を誰に対して追求できるかが重要な問題となります。

 

2 民法709条(不法行為)の責任と民法717条(工作物責任)の責任

 通常、契約関係にない当事者間で何らかの権利侵害行為があった場合、被害者は加害者に対して、不法行為として、民法709条に基づいて損害賠償請求をすることができます。

 ただし、この場合、請求する側が、相手の故意や過失まで立証しなければいけません。

 これに対して、工作物責任と言われる民法717条が適用される場合、土地の工作物の設置や保存に不備があったことだけを立証すればよく、過失などまでは立証しなくてよくなります。むしろ、相手方から過失がないこと=適切に設置や管理したことを積極的に立証しなくてはならなくなります。

 裁判になれば、証拠による立証ができるかどうかが極めて重要です。そのため、実務的には請求する側にとって、どちらで請求していけるか、重要なポイントとなりまふ。

 

 このことから、今回の事案においても、民法717条1項が適用できるか、すなわち、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があった場合に賠償責任を負うべき「占有者」にマンション管理組合が当たるかどうかが争点となりました。

 

 実務上、共用部分の不具合によって損害が発生した場合、例えば共用部分の排水管が破損したような場合、管理組合が賠償責任を負うことを前提として、管理組合が加入している損害保険によって補填されるのが通例ではありました。

 ただ、厳密には法的な責任を負わない可能性も残されており、それと関連して、民法717条1項の占有者に当たるかが問題となったのです。


 「占有」とは自分が利益を受ける意思をもって物を現実に支配している事実や状態を意味します。

 確かに管理組合は共用部分を管理していますが、この「占有」をしている状態といえるかどうか、厳密に考えると解釈の余地があり、これまでに最高裁の判例はありませんでした。

 

3 高裁と最高裁の論理

 事案としては、東京都内の分譲マンションで外壁等の不具合から漏水被害を受けた区分所有者が、マンション管理組合を相手に損害賠償を求めたものです。

 一審では管理組合の責任が認められましたが、二審の東京高裁は立法担当者解説を根拠に「管理組合は民法上の『占有者』にあたらない」として、賠償責任を否定し、判断が分かれました。

 

 最高裁は、区分所有法に基づき、共用部分の管理は区分所有者全員で構成される団体たる管理組合の決議によって行われるものである点に着目しています。つまり、共用部分は、個々の居住者ではなく、管理組合が組織的に管理して安全性を確保することが法律上予定されていることから、管理組合は「特段の事情がない限り、共用部分を事実上支配し、損害発生を防止すべき地位にある」という論法で、民法上の「占有者」にあたると結論づけました。

4 それぞれの立場から

 この判決により、従前の運用が法的な観点からも確定的になりました。

 すなわち、漏水被害を受けた住民は、共用部分の不具合さえ証明できれば、管理組合に対して賠償請求できます。ただ、その場合でも、被害を受けた区分所有者側は、漏水の原因が共用部分にあることを専門家の調査等で早期に特定する必要はあります。調査そのものを管理組合やその保険会社が対応してくれることもありますが、少なくとも調査を求めていくべきでしょう。


 一方、管理組合側は、共用部分の点検・修繕をより厳格に行い、その記録を残しておく必要があります。また、念のため、加入している賠償責任保険の内容が、共用部分の不具合による損害を十分にカバーしているか見直すことも不可欠です。

 
 従前の実務に沿う内容ではありますが、最高裁の法的判断を踏まえ、それぞれの立場から対策や対応を考えておきましょう。