事実婚の遺産相続と遺言書の有効性についての高裁による判決が報道されていました。
【事実婚の遺産相続、認めず 大阪高裁、別姓希望の夫婦】(1/16(金) 13:39配信)Yahoo!ニュース
報道によると以下のとおりです。
「がんで死亡した姉の事実婚の夫が、遺産の相続権を持たないにもかかわらず姉名義の口座から1750万円を不当に引き出したとして、妹が返還を求めた訴訟の控訴審判決で大阪高裁(谷口安史裁判長)は16日、一審神戸地裁判決に続き全額の返還を命じ、事実婚夫婦の遺産相続を認めない判断をした。」
報道を見る限り、この事件の大きな争点としては、
①事実婚=内縁の夫に妻の相続権が認められるか
②押印のない遺言は有効か
です。
ただ、前提として、本件の場合、すでに内縁の夫が亡くなった妻の口座からお金引き出しており、これが不当かどうか、すなわち引き出す正当な権限があったかどうかという形で問題になっています。
このような類型は、相続問題では頻出ですが、相続人の1人あるいは相続権があるかどうか微妙な関係者が被相続人の生前、あるいは、没後に被相続人名義の預金を引き出したことが不法行為あるいは不当利得に当たるかどうか争われるケースです。
上記争点に関して、 いわゆる結婚というのは、日本の法律では、民法において婚姻として規定されています。法律によってその関係性が保護されていることから事実婚(=内縁)と区別する意味合いもあり、法律婚とも呼ばれます。
そして、婚姻による法律効果としては、同居・協力義務や親族関係の発生などもありますが、最も大きな法律効果こそ、実は配偶者の相続権です。相続が発生した場合、配偶者は常に相続人の立場になります。
法律によって保護される効果の最も大きなものが、一方が亡くなった時のことであることは意外かもしれません。
ただ、これは婚姻届を出さない事実婚=内縁と法律婚=婚姻の大きな違いとしてあらわれます。そのため、事実婚である場合に相続権を認めないとするこの裁判例の結論は現状ではいかんともしがたいところでしょう。
なお、この問題の前提として、法律婚か事実婚かは自由に選択できるというのが前提の建前としてあります。 ただ、同性婚の場合には法律婚ができないことや法律婚では夫婦別姓が認められないことを法律婚の不利益と捉えると、完全に自由とは言えないという考え方もできます。
他方、遺言書については、法律上3つの種類が認められています。
最も確実で安定的なのが公正証書遺言です。この場合、公証役場で本人確認した上で遺言書を作成するため、無効になる可能性が限りなく低くなります。
これに対して、遺言書を自作する自筆証書遺言の場合は法律上の要件を満たさなければ無効になるリスクがあります。原則として全文自筆で書いた上、日付や署名、押印が不可欠です。
押印というのはその人が作成した確定的な意思であることを担保する意味合いがあります。
この事案での詳しい事情はわかりませんが、押印がなぜなかったのかという疑問もあり、押印がない遺言書が法律上必要な要件を欠くものとして無効になることもまたやむを得ないでしょう。
このようにみると、この裁判の結果はこれまでの実務に従うものであり、法律上の原則に従った判断ということになります。