出版大手2社に対してフリーランス法による初めての勧告!

 2024年11月にフリーランス法が施行され、そろそろ初めての勧告事案が公表されるだろうと予測していましたが、ついに公表されました。

 公正取引委員会から勧告を受けたのは、従前から口頭の契約や後払いが慣習的にもあったとされている出版業界の大手2社でした。

 

 公正取引委員会の公表内容や報道によると、以下のとおりです。

 

 出版業界大手の小学館と光文社は、いずれも雑誌編集に関わったフリーのライターやカメラマンに取引条件を明示せず、報酬を期日までに支払わなかったとして、公正取引委員会が6月17日に両社に対して取引の適正化や再発防止を求めて勧告しました。

 これまでも類似の事案について下請法に基づく勧告はありましたが、フリーランス法に基づく勧告はフリーランス法施行後初めてのことです。

 

 より具体的には、小学館は月刊誌等に関する記事、写真データ、イラスト等の作成、ヘアメイクの実施等の業務をフリーランスに委託していましたが、191人に対して報酬額や支払期日といった取引条件を書面やメールで明示せず、報酬の支払期日までに報酬を支払いませんでした。光文社も、31人に対して同様の行為を行ったと公正取引委員会に認定されています。

 

 取引条件の説明は大半が口頭でされ、報酬額は「(会社内部で)決めた費用を支払う」と明言されないケースもあったようです。

 また、フリーランス法では成果物の受け取りから60日以内に報酬を支払う義務が定められていますが、誌面掲載後になることが常態化していたようです。

 

 小学館ではフリーランス約2千人、光文社ではフリーランス約4千人と取引があるとされています。

 公正取引委員会は両社への勧告の内容として、①取引条件の明示や支払期日までに報酬を支払うことなどを取締役会の決議で確認すること、②これまでに同様の問題があったかを調査して必要な措置を講じること、③社内で同法に関する研修を行うなど社内体制を整備することなどを求めました。 

 

 処分の詳しい内容は公正取引委員会のHPでも公表されていますので、ご確認ください。

 

株式会社小学館に対する公正取引委員会の勧告
株式会社小学館に対する公正取引委員会の勧告
株式会社光文社に対する公正取引委員会の勧告
株式会社光文社に対する公正取引委員会の勧告

 

 そもそもフリーランス法では、業務委託を受ける個人や従業員がいない代表者1人の法人を「特定受託事業者」と定め、当該事業者に業務を委託する場合には、書面による取引条件の明示や期日までの支払いを委託者に義務付けています。また、継続的な取引がある場合には、一方的な報酬減額や成果物の受領拒否などの禁止行為を定め、育児や介護といった事情の申し出への配慮やハラスメント相談体制の整備も義務化しました。

 フリーランス法については、以下のブログ記事に詳しくまとめていますので、こちらもご覧ください。

 

フリーランス法の現況と対応した発注書・見積書サンプル

 

 フリーランス法に違反した場合、フリーランス側から申告ができ、公正取引委員会が違反を認定した場合は事業者名や行為を公表して改善措置を勧告し、従わない場合は命令を出すことができます。命令違反に対しては50万円以下の罰金が定められています。

 

 

 今回、特にフリーランス法の中でも基本的な内容であり、かつ、フリーランス側にも影響が大きい取引条件の明示や報酬支払いの遅延に関して勧告が出されました。また、その対象は誰しも知ってる出版業者の大手2社です。

 

 公正取引委員会としても、口頭の取引や発刊後の報酬の支払いなどの慣習があった業界について、その影響の大きさを考慮し、あえて大手2社に勧告した狙いが読み取れるでしょう。

 現に、公正取引委員会はHPにおいて、2社への勧告に合わせてこのような資料も作成し、出版業界全体へ強く呼びかけています。

 

 これにより公正取引委員会の狙い通り、同じ業界はもちろん、他の業界においても、よりフリーランス法への対応が厳しく求められ、体制を整えていく流れになっていくでしょう。このような対応は上場企業のみならず、中小企業において、フリーランスに業務を委託する場合にも遵守しなければいけません。

 

 なお、当職は法人向けのフリーランス法の解説やハラスメントの対応研修の講師もしておりますので、ご関心ある方は一度お問い合わせください。SBIグループの株式会社ファシオが運営するWebセミナープラットフォーム「Deliveru」にて、フリーランス法に関するWebセミナーも有料配信しておりますので、ご活用ください。