金融機関に対する相続手続きが一括してできるようになる可能性?!

1 金融機関に対する相続手続きの煩雑さ解消へ

 2026年4月に、金融機関に対する相続手続きについてのニュースが注目を集めました。

 

「相続手続き一括で進められる仕組み作りへ 金融機関10社合意」

(2026年4月8日12:40 NHK ONE NEWS)

 

 報道によりますと、

 大手の証券会社や信託銀行などが手続きを一括で進められる新たな仕組みを作ることで合意した と正式に発表されたのです。

 具体的には、SMBC日興証券、大和証券グループ本社、野村ホールディングスをはじめとする合計10社が出資して新会社を設立し、金融機関ごとに必要だった書類提出が一度で済むほか、気づかなかった故人の口座を見つけることもできる仕組みを目指すとのことです。

 

 試験導入は2027年、全国展開は2028年が予定されており、実現すれば相続人の負担が大きく軽減される可能性があります。

 

2 相続で行うべきことと専門家の役割

 この動きは、実際に相続手続きを行う場面に直面する当事者にとっても心強いニュースです。

 ただ、だからといって、専門家に相談しなくていいかというと必ずしもそうではないでしょう。

 

 ここではこの新たな仕組みへの期待をもちつつ、相続手続きの実態と専門家(弁護士)に相談することの意義について整理します。

 

 ご家族が亡くなった後、遺族の方々は悲しみの中であっても、多くの手続きを進めなければなりません。

 

 金融機関に関する手続きだけでも、現状では亡くなられた方(被相続人)が口座をもつ各金融機関に対して個別に連絡をとり、戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書などの書類をそろえて提出する必要があります。

 また実際に払い戻しなどをしていくためには、遺言書や遺産分割協議書などの書類も提出する必要があります。金融機関の数だけ、毎回同じ作業が繰り返されるのが実情です。

 

 さらに、相続手続きは金融機関への対応だけで完結するわけではありません。法律上の観点から見ると、次のような重要な手続きが並行して発生します。

 

① 相続人の確定(戸籍等の調査)

 被相続人の出生から死亡までの全戸籍を取り寄せて、法定相続人を確定させます。想定外の相続人が判明することも少なくありません。

  

② 遺言書の有無及び有効性の確認

 公正証書遺言の場合は公証役場で検索できますが、自筆証書遺言は法務局での保管制度も確認が必要です。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所に検認の手続きを取る必要もありますし、遺言書の有効性の判断も重要となります。

 

③ 相続財産の調査と評価

 ここでは預貯金や有価証券が中心の話となりますが、不動産、保険契約、借入金まで、プラスとマイナスの財産を網羅的に調査確認し、把握する必要があります。

 

④ 家庭裁判所への相続放棄の申述の検討

 マイナスの財産が多い場合、相続開始を知った時から原則3か月以内に家庭裁判所への申述を行う必要があります。この期限を逃すと、原則として単純承認とみなされます。

 

⑤ 遺産分割協議と同協議書の作成

 遺言書がない場合などは、相続人全員で相続財産について誰にどのように分けるかを合意し、その内容を遺産分割協議書としてまとめることが必要です。一人でも欠けた遺産分割協議は無効となります。相続人間で意見が対立し、話し合いでまとまらなければ家庭裁判所の調停・審判が必要になることもあります。

 特に相続人間で意見が対立した場合に、話し合いを代理して行えるのは弁護士だけです。不利な内容にならないよう弁護士に協議を代理してもらい、有効な遺産分割協議書を作成してもらうことは有用でしょう。

 

⑥ 税務署への相続税の申告

 原則として、相続開始を知った翌日から10か月以内に相続税の申告が必要となります。そのためには、相続財産の把握と整理、適切な評価と税務署への申告手続きが必要です。

 

 

 今回の報道であった金融機関10社の取り組みは、上記のうち預金についての確認・解約・名義変更手続きの一括化を目指すものです。これ自体が非常に煩雑な手続きを要するものですので、当事者はもちろん専門士業にとっても有用なものとなるでしょう。

 

 ただ、相続手続き全体の中では、あくまでも一部の効率化にとどまります。

 

 特に、遺言書の有効性判断、相続人の意見が対立する場合の交渉、相続放棄の要否検討、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更(相続登記)、相続税申告といった場面では、それぞれの専門家による判断と対応が引き続き不可欠です。

 特に相続登記は司法書士へ、相続税の申告は税理士へ依頼すべきです。

  

 相続人間で感情的な対立が生じている場合や不動産・非公開株式など評価が複雑な財産が含まれる場合は、法的な整理なくして円満な解決は困難です。

 

 金融機関10社による新たな取り組みは、相続における負担軽減に向けた重要な一歩ではありますが、相続は法律や人間関係が複雑に絡み合う問題です。

 早めに弁護士へご相談されることをお勧めします。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

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