梅宮アンナさんのケースで見る相続手続きのつまずきポイント

1 はじめに

 相続の手続きを直接になうことは、誰にとっても初めての経験であることがほとんどです。

「何から手をつければいいのか分からない」「期限があると聞いたが、いつまでに何をすればいいのか分からない」

 そのような不安を抱える方は少なくありません。

 

 タレントの梅宮アンナさんは、2019年12月に亡くなった父・梅宮辰夫さんの相続手続きについて、テレビ出演や講演会などで自身の体験を繰り返し語っています。

 当然ですが、著名人だからといって手続きが楽になるわけではなく、むしろ誰でも同じように直面する大変さを実感したと述べています。

 

 公表されている梅宮アンナさんの体験を手がかりに、相続手続きで押さえておくべきポイントを整理します。

  ちなみに、私は最近まで梅宮アンナさんがこのような体験をお話しいていることを知りませんでした。最近、楽待チャンネルの動画を見て知りました。YouTube動画は下部に貼り付けているので、もしまだみられていない方は、以下の記事でポイントを押さえた上で、ご覧ください。

 

2 相続人の特定や証明と戸籍収集の負担

 相続手続きを進める際の分かれ道となるのは遺言の有無です。

 これがあるかないかによって大きく流れが変わってきます。

 ここではない場合の話をしてきます。

 (遺言書がある場合の流れなどはこちらの記事をご覧ください。)

 

 遺言がない場合の出発点となるのが、法定相続人を確定させるための戸籍収集です。

 すなわち、この場合には法律に従った相続が始まるのですが、誰が相続人になる資格があるかを確定する必要があり、それを証明する手段が戸籍です。

 

 被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる必要があり、これ自体が一般の方には厄介で、多くの方が直面する典型的な壁です。

 

 本籍地を転々としている場合は、複数の市区町村役場に対して郵送で請求を重ねる必要があり、1通取り寄せるごとに日数がかかるため、それだけで数週間を要することも珍しくありません。相続人が多い場合やなどは、収集すべき戸籍の範囲はさらに広がります。

 

 自分の戸籍は取得したことがあるでしょうが、それ以上にはなかなかなく、慣れないことで負担になります。

 

3 相続にまつわる各期限のプレッシャー

 梅宮アンナさんが体験談として繰り返し語っているのが、相続税申告の期限です。

 相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、期限内に申告を終えなければならず、悲しむ時間もなかったと振り返っています。

 

 注意したいのは、この10か月という期間以外にも、相続人関連して、さらに短い期限の設定があります。

 

 まず最初に来るのが3ヶ月!

 これは相続放棄の期限です。すなわち、民法では、相続人が自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続を放棄するかを判断しなければならないと定められています。この期間内に何もしなければ、原則として単純承認、すなわち、プラスの財産もマイナスの負債もすべて相続したものとみなされることになります。

 これ以降は、原則として、相続放棄できなくなります。そのため、被相続人に借金や保証債務がなかったかどうかは、この3か月以内に確認しておく必要があるのです。ただ、財産の全容がすぐに分からない場合は、家庭裁判所に申し立てて期間を伸ばしてもらう「熟慮期間の伸長」という手続きもあります。

 なお、この相続放棄については他の相続人に申告すればいいということではなく、あくまで家庭裁判所への申述という手続きが必要になりますので、ご注意ください。

 

 続いて来るのが4ヶ月!

 被相続人の所得税に関する「準確定申告」の期限です。すなわち、亡くなった方がその年に得ていた所得について、相続人が代わりに確定申告を行う必要があり、この申告と納税は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行うこととされています。事業を営んでいた方や不動産収入があった方などは特に見落としやすく、後から追徴課税の対象になるケースもあるため注意が必要です。

 

 これら3か月・4か月の対応と並行して進めなければならないのが、相続税申告(10か月)に向けた財産調査・遺産分割協議・申告書作成といった一連の作業です。

 3つの期限がそれぞれ独立して迫ってくるのではなく、重なり合いながら進行していく点が、相続手続きの負担を大きくしている実情です。

 

4 相続財産調査の煩雑性と困難性

 期限のプレッシャーと並んで多くの方を悩ませるのが、相続財産そのものの全容把握です。

 口座が複数の金融機関にまたがっていたり、家族も把握していなかった不動産が見つかったりすることは珍しくありません。預貯金や不動産だけでなく、高価な貴金属・美術品・といった動産も相続財産に含まれ、評価・分配の対象になります。

 

 ただ、こうした「財産がどこにあるか分からない」という調査負担については、制度面での改善も進んでいます。

 

 例えば、相続登記の義務化に伴って、親の不動産がわからない時などに役立つ「所有不動産記録証明制度」という制度が始まりました。これによって、特定の被相続人名義の不動産を網羅的に調べることができます。

 

 また、報道によると、金融機関に対して一括して残高の調査等ができるようになる制度も2027年から試験導入、2028年から全国展開予定です。

 

 これらを活用することで、少しだけ負担は軽減される可能性があります。

 

5 税金と法律の生前対策の重要性ー節税と遺言ー

 アンナさんのお話によると、辰夫さんは、税理士のアドバイスもあり、生前、孫(アンナさんの娘)を養子に迎えていました。

 養子縁組によって法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額が増えるため、結果として相続税の負担を軽減する効果があります。

 このような生前の対策が、節税につながることがあります。

 

 また、遺言書が整っていれば、より手続きがスムーズだったはずだという振り返りも紹介されています。

 例え相続人間で争いがないケースでも、遺言書があれば相続の手続き自体がスムーズに進めやすくなります。

 生前に遺言や財産目録を準備しておくことの重要性を改めて感じます。

 

 財産目録や口座の一覧を生前に整理しておくことは、相続人の負担を大きく減らすことにつながります。

 

6 まとめ

 アンナさんの実例からも分かるとおり、戸籍収集の負担、複数の期限のプレッシャー、遺産調査の困難性は、資産の大きさにかかわらず、相続に直面したほとんどの方が経験する負担です。

 「まだ大丈夫」と後回しにしているうちに期限が迫り、対応に追われるケースは少なくありません。

 

 相続は誰にとっても、人生でそう何度もあることではないからこそ、早い段階で専門家に相談し、期限から逆算したスケジュールを組むことが、心身の負担を減らす最も確実な方法です。

 

 なお、当職は生前の遺言作成、争いのある相続の解決など、多くの相続案件を扱っておりますので、お困りの際はお早めにご相談ください。