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判例の学び方③〜平等権と尊属殺重罰規定違憲判例〜

憲法の人権を論じていく中で、わかりづらいのが憲法14条の平等権でしょう。
平等権は、問題にしようと思えば、たいがいの事例で問題にすることはできます。
ただ、いつでも問題にすれば良いというものではありません。そもそも主張としてすら実益ないものは、検討する必要もありません。
例えば、タバコ販売業者の営利的表現の自由が制約される法律が問題になった場合に、タバコ販売業者に対する平等権侵害だと主張したらどうでしょうか…
でもこれでは明らかに実益がありません。タバコ販売業者と他の営利業者との差別だと論じてみても・・・なかなか違憲にもっていくことが困難なことは感覚的にわかるのではないでしょうか。これはどう見ても表現の自由で勝負すべき事案なのです。 かといって、平等権侵害は「あくまでも最終手段」という割り切り方も正確ではありません。主張する実益がある場合を見極めて、しっかりと主張すべきです。
では、主張する実益がある場合とははどういう場合でしょうか??
1つの考え方としては、憲法14条1項に規定されている差別の理由たる「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」を例示列挙とはしながらも、14条1項に列挙されてる理由に基づく差別が問題となった場合には、より厳格な審査基準で臨むという立場にたち、かつ、それに該当する場合ではないでしょうか。
憲法の条文から考えても、まさに文言そのものに該当する場合ですので、やはり問題にすべき場面といえるでしょう! そして、平等権の考え方・論じ方として大事なのは、 ①まずは比較対象が誰と誰か、誰が誰と比較して差別されているのかを的確に設定しなければいけません。平等は、誰かとの比較において差別されてることを問題にする権利だからです。 ②その上で、その差別が、何に基づくものなのかを考えましょう。例えば、「人種」や「信条」などの14条1項の列挙事由に該当するものか、それともそれ以外か、それによって違憲審査基準を変えるかどうかという立場とも関係します。③さらに、その差別がどのような権利や利益についてのものかも重要です。この権利や利益の重要性が違憲審査基準に大きく影響します。
この①〜③を踏まえて、合理的な区別かどうか、目的手段審査を使って検討できれば十分な検討といえるでしょう!
ここまではあくまでも平等権を論じるために必要な一般的な知識・理解にすぎません。
実際にこのような考え方や整理を使いこなすためには、普段から事例を通じて学んでおかなければいけません。
では、それはどのように学ぶのが正解か?? これこそ判例を学ぶ意味につながります。
すなわち、平等権関連の判例を読む時に、このような整理をして読むことが極めて大切になってきます。
同じ判例を勉強していても、単にその判例の先例として有名な部分のみを知識として暗記しているのか、それとも上記のような整理をしながら、判例を分析して理解し、論文に使る自分なりの考え方による処理を訓練できているかで天と地ほど学ぶことに差がでます。
前者の学びで得られるものは結局結論部分でしかなく、それはせいぜい短答式試験でしか使えないものです。後者の学びをしておれば、事例問題が出た時に、平等権を論じるべきかどうか自ずと判断できるようになります。

例えば、尊属殺重罰規定違憲判決で考えてみましょう。
親殺しの場合のみ法定刑が無期懲役か死刑のみと規定されていた当時の刑法200条が憲法14条に反し無効とされた事例としてあまりにも有名です。
それだけにこの判例を読んでその意義しかわかっていなければ、判例を学ぶ意義というのはほとんどありません。
しっかりと色々な要素を分析しなければいけません。結論に影響した要素、影響しなかった要素、学説から批判されている点、自説で考えた時に重視すべき点など多々あるはずです。
上記のような平等権侵害の考え方でこの判例を捉えると、
①まず、加害者において、被害者の子どもか、それ以外かとの比較における差別が問題となっています。
②次に、①を前提に、被害者との関係が子どもに当たるかそうでないかという憲法14条1項の「社会的身分」による差別と捉えることができます。
③そして、刑法に有期懲役刑がなく、無期懲役刑か死刑しか法定刑がないという点において、生命や身体の自由という重要な人権に関する差別と捉えることができます。
このように把握することで、厳格な違憲審査基準を定立することが可能となり、それに基づいて判断し、違憲という結論を導くことになっていくわけです。
判例そのものは必ずしもそう明言しているわけではありませんが、判例の解釈としてそのような理解をすることができるということです。
なお、この判例も、むしろ生命・身体の自由を過度に制約するために違憲であるとシンプルな法的主張をしていくことももちろん考えられるでしょう。実際の事案でももちろんそうも主張していたかもしれません。
しかし、このような観点からの差別が認められる以上、平等権侵害と捉える方が自然で有益な主張となりうることになるわけです。
このような分析の仕方ができることをもって憲法の「センス」ということはありますが、あくまでも、意識と訓練の賜物なのです。

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H13.3 清風高等学校卒業

H18.3 京都大学法学部卒業

H20.3 同志社大学法科大学院卒業

H21.12〜 六甲法律事務所

R2.4〜弁理士登録

兵庫県弁護士会法教育委員会、同子どもの権利委員会副委員長、同修習委員会副委員長

同志社大学法科大学院アラムナイ・アソシエーション寒梅会会長

関西学院大学非常勤講師、京都大学法科大学院非常勤講師

兵庫県児童虐待対応専門アドバイザー、神戸市いじめ問題対策審議会委員

 弁護士/弁理士 松 田 昌 明

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