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「平成30年度重要判例解説」(ジュリスト)の解説

1 憲法「裁判官のツイッターへの投稿と表現の自由」(最高裁平成30年10月17日大法廷決定)

①事案

申立人

 東京高裁

被処分者

 裁判官 

手続き

 裁判官分限法に基づく懲戒申し立て

人権の性質・種類

 表現の自由

権利実現方法

 SNS(ツイッター)への投稿(報道記事のリンク+コメント)

関連条文

 裁判を受ける権利(32)、第6章司法、裁判官の独立(76Ⅲ)、身分保障(78)

 裁判の公開(82)

 

★決定内容★

 ❶裁判の公正・中立が国民の信頼の基礎→裁判官も中立・公正→国民の信頼を傷つけてはいけない

  裁判所法49条「品位を辱める行状」は職務上の行為か、純然たる私的行為かを問わない

 ❷本件投稿は、担当外・検討不十分・一方的な評価

 →表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないか

 という疑念を国民に与える

 →「品位を辱める行状」に該当

 ❸裁判官も一市民としてその自由(表現の自由)を有することは当然

 →本件投稿は裁判官に許容される限度を逸脱している

 

★決定への評価★批判的

 ❶←裁判官が勤務時間外を含め、中立性と公正性が求められることは一般論として妥当

 ❸←本件投稿が表現の自由に関連する行為と認めつつも、真正面から表現行為の制約と捉えず、

  「品位を辱める行状」かどうかで判断している

  その具体的な基準もなく、不明確で、主観的価値判断になる、類型的に考察できる

 (類型:政治的意見>社会生活一般の意見や情報>裁判制度や個別の裁判に対する意見

  >一般市民から見ても品胃を欠いた言動)

 ❷←本件投稿が一方的な評価を示すものと解釈するには無理がある(重大な事実誤認)

 

★司法試験の答案的検討★

 処分違憲として争う!

 人権共有主体

  主体裁判官→独立や身分保障(76Ⅲ・78)はある

 ⇔公正・中立な裁判の実現(第6章・32・82)という憲法上の重要な価値による制約

 人権の内容

  表現の自由(21)

 →一般論として重要+表現の自由の実現手段として、情報化社会におけるSNSの価値や重要性

 違憲審査

  重要な表現行為について「品位を辱める行状」該当性を厳格に判断?!

  (→国民の信頼性を損なう高度な蓋然性がある場合に限られる?!)

 事実認定・評価

  本件投稿は、他の裁判に関する発信

  ただし、リンクは公表されている判決文

  本件投稿自体に当事者や裁判に対する一方的な評価は含まれていない

  (→国民の信頼を損なう高度の蓋然性はない)